【概要】
著者(監督):日本経済新聞出版社編
技術士ネタ仕込み用。多様な視点から世界と日本のいまを分析する。エネルギー問題や先端テクノロジーの話のみならず、地政学リスクや日本のこれからについても多少分かった気になった。
【詳細】
<目次>
Ⅰ 日本経済はこれからどうなる
①正念場の世界経済、国内景気に消費増税の壁
②「米欧との緩和競争」開始か、日銀の追加対応は2段階で
③お金と人手、社会保障は2つの「不足」を克服できるか
④五輪や消費増税、貿易摩擦で「株式相場」は膠着か
⑤日本企業は「バブル脱出速度」に達するか
⑥デジタル化で変貌する日本型雇用
⑦加速するエネルギー転換、強まる脱炭素への圧力
⑧安倍政権はついに終わるのか
Ⅱ 日本企業はこれからどうなる
⑨令和時代に日本企業が飛躍するための条件
⑩日本企業のリーダー、稲盛氏・孫氏だけでいいのか
⑪問われる質、第2段階に入った企業統治改革
⑫「恐竜」メガバンクは生き残れるか
⑬5Gは産業や社会をどう変えるか
⑭世界的スタートアップは日本から生まれるか
⑮崩壊か再生か、小売業を脅かす3つのジレンマ
Ⅲ 世界はこれからどうなる
⑯深まる米中覇権争い、日本が直面する3つの試練
⑰米中テクノ冷戦、閉じる「デジタル鉄のカーテン」
⑱トランプ再選か民主奪還か、米大統領選を占う「4つのE」
⑲米中覇権争いと習近平政権の行方
⑳新興IT企業は中国経済を救うか
㉑難路続く?日本の周辺国外交
㉒政治クライシスの欧州はどこへ向かうのか
<メモ>
●はじめに
われわれが未来に不安を抱かざるをえないのは、これまで日本の成長を支えてきた経済・政治・社会構造が時代遅れとなってしまったにもかかわらず、その屋台骨を立て直す改革が遅々として進まない。そんな状況があまりにも長引いてしまったからだ。
●論点1
世界経済を取り巻くリスク
・米中貿易摩擦
・Brexit
・中東情勢(米・イラン)、朝鮮半島、日韓輸出管理
+コロナ!
●論点3
2050年ごろになると高齢者と現役世代の比率はおおむね固定されていく。もちろん、全体の40%近くが高齢者の「超高齢社会」であることは間違いないが、その比率で安定していくのだ。したがって、2040年ごろまでの大変化を乗り切ることができれば、その先の未来も乗り切れるという展望が持てそうだ。
わずかながら(1%程度)でも日本経済が成長していけば、そう大きな負担が押し寄せてくるという感覚ではない。予想よりも成長すれば、さらに負担は軽くなる。経済は、号令をかければ成長するものではないが、成長に寄与しそうな政策を打ち出し、促すことは大切だ。
●論点7
- 日本の再生E発電比率18%(2018)⇒30%見込み(2040)
- パリ協定:日本は2030年に温暖化ガス2013年度比で-26%、2050年に-80%
- 再生可能E比率向上
- 石炭で時間稼ぎ(CCO2排出量相対的に多いのでO2貯留もセットで)
- 水素E活用:石炭・石油の改質+CO2貯留
- 原子力は安全対策コスト増大で競争力低下
●論点9
私見では、働く人一人ひとりの「熱意」の低下が、日本企業の足踏みの大きな原因だと考える。「熱意」は英語の「エンゲージメント」の訳語である。エンゲージメントを意訳すれば「主体的な関与」だろうか。自分の職場や会社に積極的、自発的に関与して、生き生きと仕事に取り組む。そのなかからイノベーションや改善、創意工夫が生まれてくる。これがエンゲージメントの高い働き方だ。
日本人は「まじめで勤勉」とよく言われるが、自ら主体的に仕事に取り組むエンゲージメントと、言われたことを忠実に実行するだけの「受け身のまじめさ」は違う。
メーカーの社員からも「工場が日本全国にあるため、思ってもいなかった地方に配属されるリスクがある」「旧態依然とした縦割り組織で、部門の壁をまたいで一体感をもって事業を遂行する文化ではない。結果として経営のスピードが遅い」「コスト圧縮が最優先で、人事評価もいかにコストダウンできたかが重視される。その結果、技術者として新しい課題に取り組む意欲は後退し、やりがいもどんどん低下する」などといった書き込みがあった。
自己決定権のなさや縦割り組織、上からの押しつけと仕事の「やらされ感」――。日本の大企業ではごくごく当たり前の人事慣行や仕事の習慣が社員のエンゲージメントをどんどん押し下げている
●論点17
受動的に通信を傍聴するだけでなく、通信網を通して能動的にサイバー攻撃を仕掛け、原子力発電所や交通システム、医療、上下水道などを標的にした破壊工作も可能になるという指摘がある。ファーウェイや中国政府はこうした懐疑論を必死に打ち消しているが、仮に現時点で中国側にその意図がないとしても、同社が主要国の通信インフラで大きな部分を占めれば、技術的に考えて不正行為の蓋然性は高まる。
北欧2社の高コストの設備や製品しか選択肢がない国々では、産業全体のコストがかさ上げされるだろう。その結果として研究開発に振り向ける資本が減り、イノベーションが起きにくくなる可能性すらあるのではないか。
人口で見た市場規模だけではない。長期的には、経済成長力でも、いわゆる西側諸国は中国の一帯一路の陣営に負けるかもしれないというシナリオを頭の隅に置いておくべきではないだろうか。