サム・ジーヴァ帝国図書館(Javaさんのお部屋)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

ホーキーベカコン

ホーキーベカコン1 (単行本コミックス)

【概要】
著者(監督):笹倉綾人

谷崎の『春琴抄』を正統にかつ十二分に翻案しコミカライズ。加虐・嗜虐性癖や変態性がうまく表現されている。船場言葉の監修付きなのも良い。
原作の変態性と耽美性、語り物感をうまく漫画化できていたと思う(๑╹ω╹๑ )
原作では明確に触れられなかったオリジナル成分も無理がなくて◯。


【詳細】
<メモ>

  • 不思議な響きの題名は鶯の鳴き声から。
  • 時として天女(菩薩、迦陵頻伽)的な春琴の描写、後光が差す演出や表現は一見の価値がある。春琴を崇拝する佐助の心的情景を体験できるのでは。
  • 「時間と手間をかけて丁寧に作られた人工の美こそ 一切を凌駕する境地に至れるもん」らしい。相互に影響しあって人工美の極致を目指していたことが明確に語られる。
  • 佐助が春琴の足を痛む頬に当てたり、病床で春琴が佐助胸の上に乗ったり足で顔踏んづけたりと、谷崎文学の世界をよく研究していることが窺える(『瘋癲老人日記』など)。
  • 船場言葉監修付きなので台詞回しも原作準拠で違和感がない。絵も小綺麗ながら迫力があるのが興味深い。
  • 一見童顔で幼児体型ながらも出るとこ出ている春琴の造形は、原作の浮世離れした感じをよく表現できているのでは。傲岸でお嬢様気質なところも原作以上に表現できていて〇。
  • 春琴母の陰謀(掌中の珠のごとき春琴を手元に置いておきたかったから?)や春琴と佐助の暗殺作戦など、原作にないエピソード(なかったよね?)をうまく組み込めていたのでは。その作戦失敗は思わぬ効果を生むのだが…。あと口述筆記担当者が二人の娘というのも追加設定なような気がする。原作再読の必要あるな。
  • 順市は原作者潤一郎の荷姿と思われるが、その彼女的存在は誰(松子夫人?)。そしてエア会話のくだりはなぜ必要だったのか。考え続けよう。
  • 印象的なシーン:貴方が私のマスターか的な構図での主従の誓いを交わす春琴と佐助。「佐助」と罵声を浴びせ佐助を折檻する春琴、店の者には幼いながらも威厳ある啖呵を切る春琴、はぁはぁする佐助、師匠の折檻でうっかり精通してしまう佐助。ライブ会場での事件で却って美の完成に至った春琴、平伏する佐助。死に際に現れる春琴と、至上の三年間を過ごした佐助(仏の台[うてな]、蝦蔓の虫)。
  • 面白シーン:菊mogmog(「え……?」下女ドン引き)

鵙屋琴いうお人が
温井佐助の観る鵙屋春琴と成っていったんや思います

 

それは鶯が幼少の頃より師匠鳥から鳴き声を覚えてゆくが如く
幾年もかけて作られていった人口の鵙屋琴

 

二人で築き上げた鵙屋春琴という人工の美

 

でも人間である以上いつか衰える
ならばその美の極まった刹那で
時を止めるべきだと思った

 

その日が来るまで
二人で磨き上げていった

 

そして

 

その美は完成してしまった

 

永遠のものにしようとした春琴師匠の美が破壊されてしまい
ならばと佐助さんは思い至った


眼を閉じ 観念境に飛躍してしまえばいい


春琴師匠の観測者である佐助さんが
外界の眼を失ったかわりに
内界の眼が開けたことで
美を不変のものにした


いや一層進化させていけることに気づいた

 

彼らの“追求”を阻むものはもはや無くなった
物質も時間も干渉できない

 

佐助さんは現実の鵙屋琴をもって
観念の春琴師匠を…
人工の美の窮極たる春琴を喚び起こしたんだ

 

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