【概要】
著者(監督):高坂希太郎
原作未読。普通だけど良質、よくまとまってっている。派手さはないが起伏のあるまっとうな成長譚で、時間をおくほどしみじみとした余韻が深まる。ひそかに心の中で大切にしたくなる物語。基本的に登場人物がいいやつばかりなので安心感がある。
宿泊客との交流と相互の亡くなった夫婦の遺児ではなく春の屋の若女将として生きることを宣言するシーンや、両親や幽霊二名の守護霊たちが成仏するシーン(4人神楽)はお約束だがじんわりきた。また究極のサービス業である旅館という職場で、仕事にコミットし個人に向き合う姿勢の大切さも教えてくれる。
蜘蛛やトカゲなどの生きものの動き、着物の所作、作家親が食後の皿を片付けるシーンやグローリーネキが氷ごとグイッと一気飲みするシーン、簡明なデザインながらも躍動するおっこやウリ坊などのキャラ、さりげなく季節が巡っていることを示す服装や風景…丁寧なアニメーションの良さがある。
【詳細】
<あらすじ>
<印象>
- 客層のほとんどが年齢1桁パーソン+親なので若干居づらい。
- 蜘蛛や蜥蜴の出現、窓のカギのいなか表現が〇。命の洗濯のできる旅館。行きたくね?
- けっこう言うことは言う主人公、トラウマや弱さを持っており元気なだけじゃないのが好感。小さいのに大変だね。イオン的場所でのファッションショー、驚きのシェー状ポーズも印象的。
- 軍師たる守護霊+魔物たち(ウリ坊、美陽、鈴鬼)のおせっかいで退屈しない。特にウリ坊はハナクソでコメディ成分を供給してくれる。「けがないか」「パンツー丸見え」の小ネタは見逃さなかった。
- 挿入される親の記憶(というか霊)の描写がしんどい。
- 人との出会いで鍛えられる主人公。旅の作家、占い師、事故関係者それぞれが、客の個性に合わせたサービスをすること(プリン)、事故のトラウマを克服すること①、ライバルの知恵を借りること+克服②の試練を与えているのだなあ。
- とかげに慣れる、着物で走る(こけるけど)などのシーンに主人公の成長が感じられる。それを見届けた両親と守護霊たちは成仏するんだな。
- みんなええやつやけど、ライバルの真月もいい奴やなあ! 道を同じうする者だものね。ヘロドトスやトルストイ、ディズニ―の名言も呟くし博識やなあ! そして医食同源。
- 自己関係者である旨判明⇒両親成仏⇒亡くなった夫婦の遺児ではなく、春の屋の若女将として生きる宣言⇒バカ女将返上⇒4人神楽⇒守護霊全成仏の流れはなかなかだったね。
- おっこさんが死にかけて霊媒体質になったり、鈴鬼君が厄介な客を呼び寄せたり(供え物が消失したり)と設定に無理がない。