著者(監督):原卓也
【概要】
ペテルブルク、シベリヤ、ロシア正教、恋愛、癲癇、賭博など種々の切り口から分析をおこない、文豪の生涯と作品をたどる。作品からのたくみな引用により、文豪の内面と近現代ロシアの苦悩を窺い知れる。
【詳細】
ドストエフスキーの著作はもちろん 文豪や批評家の言葉をたくみに引用し、ドストエフスキーの生涯にとその時代に迫る。
愛情、熱情、絶望、苦悩、あらゆる感情に溢れた人間であったようだ。
彼が脚フェチであること、癲癇に至高の実在を見たであろうことは興味深い。
ドストエフスキーに言わせれば、真の個我の自由とは、自由意志に基づき、完全に自覚的に誰からも強制されることはなく、万人のために自己のすべての犠牲に供することにほかならなかった。(中略)
ラスコーリニコフに限らず、ドストエフスキーの描く人物はみな、生の充溢と死とのはざまを、現実と幻想の間を、絶対調和と暗黒の間をさまよいつづけ、死を超えた生を追い求める。そして、彼らを導きうるのは、ドストエフスキーによれば、ただ一人、真に美しい人、イエス・キリストだけだったのである。