Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

自閉症の僕が跳びはねる理由

著者:東田直樹
評価:B+

【評】
僕は跳びはねているとき、気持ちは空に向かっています。空に吸いこまれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです。

みんなが僕たちを誤解していることのひとつに、僕たちはみんなのような複雑な感情は無いと思われていることです。

NHKの番組で一躍時の人となった自閉症スペクトラム障害の作家。
不思議な感性で綴られる言葉はふつうの人にはひねり出せないだろう。
短編小説は14,5歳の時のものなので未熟な部分が目立つが、きれいな心を持っている。
天与の不思議な感性を活かして、
自閉症だから」「自閉症なのに」を抜きにして語られるような作家になってほしい。

<体・心>
僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものです。

理由が見当たらないのにけらけら笑い出したり、ひとりで大騒ぎしたりすることがあります。(中略)
思い出し笑いの強烈なものと思ってください。

僕はいつでも出口を探しているのです。
どこかに行ってしまいたいのにどこにも行けなくて、いつも自分の体の中でもがき苦しんでいます。

<言葉・声>
声は出せても、言葉になっていたとしても、それがいつも自分の言いたかったこととは限らないのです。

自分の気持ちを相手に伝えられるということは、自分が人としてこの世界に存在していると自覚できることなのです。話せないということはどういうことなのかを、自分に置き換えて考えて欲しいのです。

ずっと遠くの山を見ている人は、近くのタンポポの可憐さには気がつきません。近くのタンポポを見ている人は、遠くの山の緑の美しさには気づかないのです。僕たちにとっては、人の声というものはそんな感じです。声だけで人の気配を感じたり、自分に問いかけられている言葉だと理解することは、とても難しいのです。

<美しさ>
物は全て美しさを持っています。
僕たちは、その美しさを自分のことのように喜ぶことができるのです。

自然は、いつでも僕たちを優しく包んでくれます。
きらきらしたり、さわさわしたり、ぶくぶくしたり、さらさらしたり。

<変わらないこと>
変わらないことが心地よいのです。
それが美しいのです。 

繰り返しは、とても楽しいです。
なぜだと聞かれると、僕はこう答えます。
「知らない土地で、知っている人に会っておしゃべりすると、すごくほっとするでしょ」

<記憶・時間>
僕の記憶は点の集まりで、僕はいつもその点を拾い集めながら記憶をたどっているのです。

僕たちの一秒は果てしなく長く、僕たちの24時間は一瞬で終わってしまうものなのです。
場面としての時間しか記憶に残らない僕たちには、1秒も24時間もあまり違いはありません。 
いつも次の一瞬、自分が何をしているのか、それが不安なのです。

僕らは帰りたいのです。ずっとずっと昔に。人がまだ存在しなかった大昔に。 (中略)
僕たちは原始の感覚を残したまま生まれた人間だからです。
僕たちは時間の流れにのれず、言葉も通じず、ただひたすらこの体に振り回されているのです。
ずっとずっと昔に帰れたなら、きっと今のみんなのように生きられるでしょう。 

人類は多くの命を殺し、地球を自分勝手に破壊してきました。人類自身がそのことに危機を感じ、自閉症の人たちをつくり出したのではないでしょうか。