評価:A
【評】
「何者であるかはともかく・・・・・・チャーリーは五万年以上前に死んでいるのです」ハードSFの金字塔。
月で発見されたルナリアンの死体から始まった謎。謎が謎を呼ぶ。
一つ一つ仮説を検証していくさまは、まさにサイエンス・フィクション。
ハントの発表には痺れた。
どの説が正しいか、どの論が誤りか、判断しようとするのは問題の本質を見失うことであろう。(略)
もし、彼らが初心に帰ってその一点の誤りを突き止めるならば、矛盾は雲散霧消して、対立する議論は何の抵抗もなく、円満に統一されるのではなかろうか。
ハントはその出来事から現代に至るまでに流れ去った長い長い時間のことを思った。宇宙のどこかで繁栄し、そして亡び去った国家のことを思った。灰燼と帰した幾多の都市。一瞬の光芒を発って過去に飲み込まれて行った生命。その間中、この岩に隠された秘密はついに明かされることなく、沈黙の裡に閉じ込められていたのだ。
「人間は不屈の気概によって海や空を征服し、宇宙の挑戦を受けて立った。時にはその攻撃性と強い意志とが歴史に血塗られた汚点をしるす結果を招くこともあった。しかし、この強さがなかったら、人間は野に放たれた家畜と同様、まったく無力だったに違いないのだよ」
そして、余韻を残すラスト・シーン。