信夫はこん身の力をふるってハンドルを回した。だが、なんとしてもそれ以上客車の速度は落ちなかった。みるみるカーブが信夫に迫ってくる。再び暴走すれば、転覆は必至だ。次々に急勾配カーブがいくつも待っている。たったいまのこの速度なら、自分の体でこの車両をとめることができると、信夫はとっさに判断した。
史実を詩的に結晶させた好中編。読みやすい。
平易な基督教エッセンス入門書ととってもいいかもしれない。
「信夫さん。人間てね、その時その時で、自分でも思いがけないような人間に、変わってしまうことがあるものですよ」
「もしこの世に、病人や不具者がなかったら、人間は同情ということや、やさしい心をあまり持たずに終わるのじゃないだろうか」
「みなさん、愛とは、自分の最も大事なものを人にやってしまうことであります」
父母の薫陶、『無花果』、吉川との友情を通じてビルドゥングされていくノブヲ。
ビルドゥングされたい青少年にゼヒ薦めたい。
回心からクライマックスまでは一直線。