【概要】
著者(監督):大佛次郎
大佛次郎記念館にて。
実はダイブツジロー初見。小説も読みたい。
捨て猫押しつけられおじさんとして常時15匹程度を飼育していた模様。自分が死んだとき、来世、猫視点での自分の描写、猫たちの想い出など、猫に関するエッセイを集めた。「ネコ家」の墓所(アベラールとエロイーズのそれ付近)を訪れたり、エジプトの猫関連の遺物について書いていたりもする。
ペットというよりは同居人で、曰く「匹といい度く無い程に彼らは私の家族の一員だ」ったとのこと。猫へのなりきり描写には多くの人が賛同するのではなかろうか。
猫は、ものごころのつく頃から僕の傍にいた。これから先もそうだろう。僕が死ぬ時も、この可憐な動物は僕の傍にいるに違いない。——お医者さんが来る。家族や親類の者が集る。(最後には坊さんも来るわけだが)その時此奴は、どうも、いつも見なれない人間が出入りして家の中がうるさくて迷惑だと云うように、どこか静かな隅か、日当りのよい所に避け、毛をふかふかと、まるくなって一日寝ているだろう。寝るのに倦きたら、起きて思いの丈伸びをする、草原へ出て虫を追う。空腹を感じたら、降りて台所へ行って、長い尻尾を立て、家人の裾に体をすり寄せて飯の催促をする。 それが済んだら顔を洗う。 さて、それから何をしたら一番気持がよく満足かを考えて其の通りにする。 空気を薄ら寒く感じたら、薬の匂いを嫌いながら、活気があって暖い看護婦の膝にあがって、また眠ることだけを考える。
【詳細】
<目次>
- 随筆・猫のいる日々(黙っている猫/ 猫のこと/ 私の猫/ 熱海の猫/ 新しい家族 ほか)
- 小説一篇・童話四篇(白猫/ 猫の旅行/ 小猫が見たこと/ 白猫白吉/ スイッチョねこ)
<メモ>
猫関連の記述:
- 「此の気どり屋の動物の静かな姿や美しい動作」
- 来世は猫だ。-->めいめい気持ちの良いところを探して。ゆったりと香箱を作って睡ろう。-->区切られている時間なんてない。
- 猫が人間に冷淡なので、好きなのである。
- 人間よりも猫の方が口をきく義務を解かれるだけでも、私にはなつかしいし、都合もいい。猫の毛が柔らかいのもいい。無邪気で好い遊び相手である。
- ネコのように怠けて好きなことをして日だまりで寝ていたい
- 居心地よいところを捜してすわり込むことでは彼らは天才なのだ
- 事、猫に関しては、何を話しているのか私は自慢ではないが、大体わかる
- 私を、そっとして、ほっといてください、と言うのが元来、猫の真言(ほんね)なのである。
- 猫としても立派な奴だった たくましい奴だった
「物や人に対する愛情だけが画にしろ文学にしろ全部の芸術の基礎だと固く信じている」とか、「並んだ家の窓の中に、地上どこに行ってもある人間に共通した悲しみや悦びが隠れている感じで、よごれた壁にも親しみを覚える」など文学者らしくマジメなことを言ったりもする。
それにしてもスイッチョってなんだ!?
これはパリではなくイスタンブールの猫たち。