【概要】
著者(監督):最果タヒ
タヒさんの詩集。実は里庄と同窓らしい。透明で濁った死と生の交錯。一瞬だけの世界の全体的な把捉と同一化、そして別離と忘却。『グッドモーニング』あたりの鮮烈さはなかったかな。意味が取れないところもある(考えるな、感じろ)が、なんだかんだ人間賛歌的な空気は感じられたよ。
世界が美しく見えるのは、あなたが美しいからだ。
そう、断言できる人間でいたい。
【詳細】
<メモ>
〇青色の詩
都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない。
夜空はいつでも最高密度の青色だ。
きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さない間、
きみはきっと世界を嫌いでいい。
そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない。
〇朝
私の好きなものは夜のうちに滅んでおいて。
〇惑星の詩
恋をした女の子が嫌いだ。
どんな悪意もきれいな言葉にできるから、
人間はまともな世界を手に入れられない。
春が去り台風が薙ぎ倒した命たちが夏の日差しにさらされている。
緑。きみがまた美しいふりをして、嫌いな人を傷つける。
四季にすらなれない感情に、何の意味もないよ。
〇星
ときどき私やきみという存在が無駄で あいだの気持ちだけが本当に世界に必要だったものなんじゃないかと思うよ 土が空気を吸っている 町から少し離れた川べりで きみのあの日の言葉がいまも、ころがって、水をなでている
きみより尊い命なんてないよ
〇新宿東口
だれかの暇つぶしのために、愛のために喧嘩のために、ぼくは生きているわけじゃない。退屈を知らない人に、生きる意味って、あるの。
一部似ているところが(; ・`д・´)
〇竹
愛してで事足りるような孤独なんて持っていないよ。
私をかわいそうだって言っておきたい人がいるから、
ここはまだまだ優しい世界。
全人類、私のために、生まれてきておめでとう。
〇花と高熱
真夏が終わるあいだ、生きていることを思い知った肉体。
快感のように終わっていく命だ。熱湯の中に入れていく魚も、野菜も、生前よりも鮮やかな色。死によってうつくしくなれないものを人間はきっと消化できないのだろう。
〇貝殻の詩
静けさが唯一ひとをまともに見せるなら、
夕日の時間がずっとずっと続いてほしい。
きみの命も、永遠であってほしい。
〇空白の詩
きみが言う悪口そのものになってみたかった。
清潔なふりをして、君をただ一度だけ純粋に、
肯定できる言葉になりたい。
〇めざめ
季節が恋人だ、そうつぶやいたとき、急に世界が私の孤独を、
宝石に光を反射させるように観察しはじめる。永遠のなか。
いくつもの肉体や精神を、私は、私のなかに反射させなきゃ、
いけないんだろうか。
〇ひとの詩
きみがひとつの尊い命であるということを、
ぼくは人間だから理解できたんだ
生まれてきて、よかった
〇もうおしまい
春、生まれた日にあびた祝福を、忘れない人はいない。
だから毎年桜は咲いて、私たちを2秒だけ、透明にする。
〇美術館
ばくの最低な部分が湖のように、深いところで光って、中を泳ぐ魚たちが絶対に死なないことが、実は、ちょっとだけ好きだ。大切な感情はすべて重たくて、沈めていく。100パーセント、美しさのせいで泣きたい。悲しみも寂しさも下水道に捨ててしまいたい。
〇黒色の詩
好きだという言葉と軽蔑に、
大して変わらない反応を見せるばくの心臓。
街の宝石はネオンでも星でもなく、
ねむれないのに無理に閉じたきみのまぶたの奥にある。