【概要】
著者(監督):原田マハ
バーナード・リーチを中心に、日英の同時代人の文化交流を描く。亀ちゃんという架空の人物を加えて描かれるアートフィクション感はさすが。あと有名人たちの熱気あふれる交歓とか熱情とか。
大原美術館が近いので親近感。あと、ちょうどブラタモリで日田やってたのも運命感じちゃったよね。
【詳細】
<目次>
- プロローグ 春がきた
- 第一章 僕の先生
- 第二章 白樺の梢、炎の土
- 第三章 太陽と月のはざまで
- 第四章 どこかに、どこにでも
- 第五章 大きな手
- エピローグ 名もなき花
<メモ>
リーチ「好いものは、好いのです。理屈はいりません」
「さあ、コウちゃん。私たちの仕事をしましょう!」
- 亀之介なるオリキャラが、バーナード・リーチをはじめ、柳宗悦、濱田庄司、河井寛次郎ら芸術家と出会い、お互いの心の窯の火を燃やし続け、やがて巣立っていく。岸田劉生や志賀直哉、武者小路実篤といったキャラも登場する。
- 東京での仲間探し、我孫子火災事件、リーチ・ポタリ―設立などのイベントを経て成長していく亀ちゃん(; ・`д・´)
- 全体的にひたむきで情熱的。まぶしい。平易で簡潔な文体で、非常に読みやすい。
- ジジ臭い陶磁器のイメージがちょっと身近になるかも。釉薬とか焼成とか。
──私は二つの日本に別れを告げる。どちらとの別れも等しく辛い。一つは香り高い一杯の茶のような過去の日本─私はその口縁を愛撫したものだ。もう一つは、生活を共にし、兄弟のように愛した真面目で、弛まず努力し、不器用な将来に登場する若い日
本である。魅惑の島々よ、あなたに別れを告げる。あなたは、芸術を温かく育む家!
リーチの弟子になって、十一年あまり。長いようで、あっという間だった。
横浜の店を出て、高村光雲のもとで書生をしていたとき、自分の未来はぼんやりと霞に包まれていた、芸術家を志してはいたものの、いったいどうしたら芸術家になれるのか、よくわからないままだった。
そんなとき、高村家の門を叩いた、ひとりのイギリス人の若者。
すらりと背が高く、生真面目に背広を着込んだ姿。好奇心に満ちた明るい鳶色の瞳。
バーナード・リーチとの出会いが、亀乃介の人生を変えた。
──私は、イギリスと日本を結ぶ、架け橋になりたい。
大きな志をもって、単身、日本へやってきたリーチ。
そして、この国で見出した、陶芸というひと筋の道。
その道が、故国・イギリスにもつながっているのだと信じて、まもなく旅立つ。
──リーチ先生。
自分は、まだまだ、自分のことを「芸術家」であるとは言えません。けれど、先生が切り拓いてくださった道を自分も歩んでいく覚悟です。
いつの日か、胸を張って、沖亀乃介は芸術家である、と自ら言えるようになるまで。
そんな思いを胸に、亀乃介は、歓送会の席で仲間たちの激励を受け、酒を酌み交わし、おおいに語り合った。
イギリスへ出発するまえの、忘れがたい一夜であった。
「まるで、リーチ先生は、遠い日本で運命の恋人に出会ったみたいね。 陶芸という。名のとびきりすてきな恋人に」
なんという、すばらしい日々。胸躍る冒険と、希望に満ちた瞬間の連続だったことか。
その日々のすべては、この人とともにあった。
──リーチ先生とともに。
「……先生」
亀乃介は、リーチの手を握りしめたまま、まっすぐにその目をみつめて言った。
「僕は……いままで、先生とともにあったことを誇りに思います。その気持ちを忘れずに、これからは……ひとりで……」
そこまで言って、声が詰まってしまった。
別れのとき、どうしても泣きたくはなかった。笑顔で、この地を去っていきたかった。
亀乃介は、涙をぐっとこらえて、笑顔を作った。
「ひとりで、歩いていきます」
亀's sonがリーチや父の恋人に逢う展開は王道(; ・`д・´)
●日本民芸館
https://mingeikan.or.jp/collection/author01.html