【概要】
著者(監督):辻村深月
初辻村深月。
使者(ツナグ)を媒介にして、死者が一夜の間、肉体を伴って依頼者のもとに現れる。という不思議な設定(原理は謎)。5人の依頼者とツナグ自身の計6編の短編集のような構成。死者たちは(生者の中で)どう生きるか、を問いかける。半信半疑だったけどあの人に会えてよかった~、といったハッピーエンドばかりでないのが意外とリアルかも。感謝や愛情だけでなく、後悔や憎しみも生きる原動力になるようだ。
呼び出される死者は生者に都合のいいイメージの集合体ではないのか、告白することで生者が気持ちをスッキリさせるのはエゴではないのか、などの疑問にも作中でツナグ氏が先回りして問題提起してくれる。
こういった物語を読むとやっぱり、自分は誰に会うか、誰に会ってもらえるかを考えてしまう。
【詳細】
<メモ>
「死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口。僕が使者ツナグです」
死んだ人間にとっても、生きた人間にとっても一度きり。一日限定で夜明けまで。そんな邂逅を可能にする能力者・使者(ツナグ)。
呼び出せば生きた人間のようにそこにいて、体温と重みがある。そして夜明けを迎えると一瞬で消える。「その感触も重さも、匂いすら、いつの間にか、周りからきれいに消えていた」。
「~の心得」というタイトルで全5話。「親友の心得」にやや毒があるか。
「死者の心得」では各話の裏話が明かされる。
死者は、誰のために、何のために、そこにいるのか。
失われた誰かの生は、何のためにあるのか。どうしようもなく、そこにある、逃れられない喪失を、自分たちはどうすればいいのか。