【概要】
著者(監督):是枝裕和
タイトル通り「万引き家族」の奇妙な生活を描く。淡々とはじまり淡々と終るのかと思いきやサスペンス要素もあり意外と面白い。展望のない貧困描写、服装や小物類のチープさや猥雑さ、俳優陣の演技がリアリティ醸成を助ける。そして女性陣、とくに松岡茉優がエロい。
金でつながっていると口では言っていても、「ホントの家族」じゃないと分かっていても、欺瞞や虚飾に塗れていても、生(性)を実感できる瞬間が確かにあったから、子供(息子・娘)は最後にあんな表情をしたんじゃないだろうか。幼少期の幸福はなんとしても確保しないといけないなあ。
【詳細】
<あらすじ>
<印象>
- 冒頭の少年いや買わんのかーいで既に引き込まれる。少年のプレルーティンパフォーマンスが印象的。一人が注意を惹いてもう一人が万引きする、防犯システムをかいくぐって釣竿を盗る、などのテクニックが本職のように上手い。働かざる者食うべからず(働く=盗む)。
- 雑然・猥雑な家の中。実にありそうな部屋。金持ちほど部屋がすっきりしていくんだよね。茉優元実家との比較でその家格差が如実にわかる。大学生の宅飲み感ともいえる。私は某部活のクラブハウスを思い出した。
- 基本的に登場人物の服がダボダボで、ボンビー臭さがまさに匂い立つようにうまく表現されている。デカいリュックやいちいちショボい小物がリアル(でも、よそ行きの一張羅もちゃんとある)。そんな中にあって、ババは古い人らしくミカンの食べ方や食事の作法など精神的なポリシーがある模様。ただしパチンカスはNG。
- ハンカチを敷かれたりベルトせずにうろうろしたりと小汚いリリフラ。
- 松岡茉優えっちポイント①おピンクなバイト膝枕②海。
- 押し入れが少年の秘密基地になっていたり、工場での拾い物をおもちゃにしていたり、これがまたリアルなんだなあ。監督、子ども見つけてくるのがうまい。
- 丸顔ママの安藤サクラの存在感。中年情事のあとしたたるそうめんの滴。家庭内の性(夫婦、姉弟)も作品世界に紛れ込ませる。そして貧しい中にも花火や海水浴などの娯楽はある。
- この一家、収入がまったくないわけではなくババの年金詐欺に寄生していたり、正社員と非正規社員の差・収入と文化・教育格差が描かれていたりとなかなかリアル。
- ババの死で改めて思い知らされる共同体のもろさと本性。「金でつながってんだよ」。人(特定の)のものでなければOK、の前提を崩す車上荒らしに手を染めるオトン。妹をかばって少年が飛び降りしたことで身バレの窮地に立つ家族。夜逃げするも捕まり、やがて明らかになる万引き家族の内幕。サスペンス要素あり。
- 少年を見捨てて夜逃げしようとしたり、ババを埋めたり、ゆるくもろい実利的な共同体ではあったかもしれない。しかしそこにもひとときの「家族」はあったかも。社会のあぶれ者を捨てるのではなく拾う、というオカンの歪んだ思想がこの家族を生み出した。
- 捜査員が言ってた「ホントの家族」とは何なのか。せっかく「ホント」の家に帰って来たのに、ラストで少年の顔に寂寥が浮んでいたのはなぜか。