Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

死者を弔うということ

著者:サラ・マレー 訳:椰野みさと
評価:B+

【概要】
世界各地の葬送儀礼のかたちに関するノンフィクションもといエッセイ。現地ルポタージュと著者の経験、そして豊富な引用がちりばめられている。ちょっといい話や笑い話で毎回オチをつけるのがグッド。

【詳細】

葬儀には、この世でもっとも奥深くに秘められた哲学と迷信、希望と恐れが姿を垣間見せる。
人が死に際して下す選択からは、なんと多くのことがわかるのだろう。この世の最期を飾るやり方には人々の望みや怖れ、価値観や信念が現われる。そして最後に残される肉体に関する決断には、愛や友情をどのように考えるかが示される。


父親や現代英国人の死に対する態度と対比しながら、イラン、バリ、ガーナ、チェコなど世界各地の葬送儀礼のかたちを描いたノンフィクションもといエッセイ。

現地ルポタージュと著者の経験、そして豊富な引用(埋葬法[土葬、火葬]、防腐処理、聖遺物、棺のプチ歴史。ガーナの珍妙な棺、台湾の冥婚、ユダヤ教徒のシヴァ期間、戦没者遺体に関する取り決め
等)がちりばめられている。
死をパッケージ化した現代人の死に対する態度や、物質と化した身体に施される処理やその化学的・物理的変化(腐敗、燃焼、崩壊)と対照をなす、これらの葬送の美と幻と冗長さ。

ちょっといい話や笑い話で毎回オチをつけるのがグッド。 
「火葬は死者を身軽にする」「死は究極的な民主主義の施行者だ」等のキメ台詞も見逃せない。

<バリ>

美は私たちにとって哀歌による嘆きや悲しみの葬送曲、優美な霊廟の数々と同じように、うちひしがれた状態を乗り切るための力となる。


<父の思い出>

父が好きだった音楽を耳にしたり、父に買った本を見かけると必ず父のことが頭をよぎる。不意に悲しみに襲われる瞬間だ。けれどその瞬間は父とのつながりを感じる、甘く心地よいものでもある。

<儀式>

儀式の手順と追悼のしきたりは私たちに深い悲しみをくぐり抜けさせる。まずは私たちに為すべき事柄が与えられる。さらには、ありふれたようにも見える喪失に、重要な意味があるのだと心強く思わせる。しかし何よりも大事なことは、共同体全員が熟知した手順を通して、死によって生じた混乱に社会的な秩序がもたらされることだ。

 

私たちは儀式(私たち独自の意味で)のうちに、何やら懸命に意味を再発見したいと望んでいるようだ。ありふれた匿名性に埋もれる死を救い出し、19世紀後半にはじまって葬送の形をすっかり変えてしまった職業的葬儀業者の手から、死を取り戻そうとしている。皺一本ないスーツや糊のかかった白シャツの姿の葬儀屋を追い払い、ヴァイキング式の送り出しと、アイスクリーム販売車での告別、そして一分間の「騒乱」――ここでの死は、かつてとはまったく違う。