評価:B
【評】
初期周作。
後年の作品にも通底するテーマの萌芽が見受けられるが、少し印象が弱い気がした。
あとは、そうさな…少し物語の運びが芝居くさい感じもする。
「白」
処刑、拷問、虐殺の日が近づいてくる。人間世界が、文明や進歩の仮面を剥いで、真実の面貌を曝けだす日がやってくる、イボンヌと老犬の世界、アデンのアラビヤの娘と少年の世界、動かない白い太陽の下、焼けただれた褐色の草原と岩石とが本来の姿を取り戻す日がやってくる。私は知っていた。
「黄色」
彼ら日本人は上梨にすべてをすされるのだった。教会も罪の苦しみも、救済の願望も、私たち白人が人間の条件と考えた悉くに無関心、無感覚に、あいまいなままで生きられるのだった。
金色の粗毛のはえたその甲は、たしかに白人の手であり、神を信ずるか、憎むか、どちらかを選ばねばならぬ種族の掌だった。私は黄色い種族になれずこの肌の色だけは変えることはできなかった。