Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

人間臨終図巻

人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)
人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)
著者:山田風太郎
評価:A*

大衆小説の大家・山田風太郎が淡々と描く、古今東西の人物の死に様。(『バジリスク』で有名な『甲賀忍法帖』なら読んだことあるんじゃない?)
全4巻・2000ページ弱からなり、巻を重ねるにつれて死亡年齢が上昇する(数え方は西暦で、没年-生年)。十五歳の八百屋お七から百二十一歳(?)の泉重千代まで計923名の死が集う魔典。臨終の描写が6ページにわたるものもあれば、2,3行で終わるものもある。それも苦痛が紙面に充満したものからポックリ大往生まで多種多様(たいてい苦しんでたけど)。時折挿まれるシニカルな風太郎節を除けば淡々とした臨終の描写が続くが、読んでいくうちに読者はきっと感じ取れるはずだ。人間はその生き方だけではなく、死に方もまた重要なんだということを。いかに生き、いかに死すかが人間を人間たらしめるのだということを。揺さぶられる死生観。

そして自分は強く思った。
「ビッグになろう。そして100歳くらいまで元気に生き、いつか愛する者に囲まれながらポックリ逝こう」と。

本書は1986年に出版されたので、ギリギリ夏目雅子(85年没、享年27)は選出されているが(他のメンツを考慮すれば、彼女が選ばれたのは奇跡といってよい。やったね!)、尾崎豊(92年没、享年26)や坂井泉水(07年没、享年40)はさにあらず。ほかの候補は第2巻の解説を参照されたい。著者は2001年に他界したが、本書をものした彼はいまわの際に何を思ったのであろう?

死の描写・エピソードが心に残った人物を以下に示そう。
第1巻の人物の死因は結核・刑死・戦死などと凄惨この上ない。第2巻からは病死が大半を占めるようになり、終わりの第四巻になってようやくポックリ度が上昇し始める。まあ寿命の長短は別にして、読んでいるうちに何度か思ったことの一つが、ある偉人の業績が立派だからと言って、その人が尊敬できる人間性を兼ね備えているわけではないということ。みんなも『人間臨終図巻』に載っても恥ずかしくない人間になろう!

二十代で死んだ人々
石川啄木
夏目雅子

三十代で死んだ人々
小林多喜二
中原中也
広瀬武夫
フットレ
・横川省三

四十代で死んだ人々
・石田吉
若山牧水
・西竹一
・小平義雄
三島由紀夫
・ザヴィエル
小山内薫
大久保利通
伊藤左千夫

五十代で死んだ人々
・ニコライ二世
・フーディニ
中江兆民
ラフカディオ・ハーン
吉田満
スタンダール

六十代で死んだ人々
戸川猪佐武
福永武彦
川上宗薫
小林一茶
与謝野晶子
福沢諭吉

七十代で死んだ人々
アンデルセン
花柳章太郎
江戸川乱歩
内田吐夢
松本幸四郎・八世
高村光太郎
川端康成
大山巌
河竹黙阿弥
吉屋信子
ルノワール

八十代で死んだ人々
入江相政
ゴヤ
高橋是清

九十代で死んだ人々
武者小路実篤

百代で死んだ人々
・物集高量