世界というものはすばらしい。それは無限の宝を宿している。人はまだよくこの無限の宝を見つけることが出来ない。無限の宝というものは、何よりも、お前自身の中にある。汝自身の中にある、世界の無限の宝を開拓せよ。そういう世界肯定の思想が密教の思想にあると私は思う。
物質が肯定されるとき、客観世界が肯定されるのである。密教は偉大なるコスモロギーを持っている。コスモスの中で、我々の存在が考えられている。私はこの身体性の肯定、物質の重視、コスモロギーの存在を、密教の思想的特徴と考える。
禅の墨色の世界にたいして、密教の世界は五彩の世界である。五彩の世界も、原色の五彩の世界である。それは、まことにケバケバしい色の世界である。なぜに、そのような色の世界が必要であるか。それは五彩の色を通って、世界万歳、感覚万歳を叫ばれんがためである。