評価:A
【評】
『般若心経』『金剛般若経』『八千頌般若経』のダイジェスト版。
ほんとに仏教は東洋思想の大きな母体となっているなあと思う。
ただ、早熟すぎてすぐに世界の秘密<空>に行きついちゃったからずっと円環を廻っていたらしい。そう、糸車が回るようにね(←うまい)。
その間に、二元的観念が濃厚な西洋思想が肥大化・膨張をして今日に至る、と。
はたしてこれからの時代、人類の思想潮流はどちらに向っていくのでしょうか😊
空は、全てを包容します。それに対立するものがありません。空というものは、なにもないことであると同時に、存在の充実です。あらゆる現象を成立せしめる基底です。それは生きている空です。あらゆる形がその中から出てきます。そこで、空を体得した人は生命と力に満たされて、一切の生きとし生けるものにたいする慈悲をいだくことになります。
慈悲と空とは、実質的には同じです。哲学面から見ると空ですが、実践面からいうと慈悲になります。われとなんじが相対しているとき、そこに隔てがあるかぎり、われとなんじの対立はいつまでも残っています。けれど、その根底にある空の境地に立って自分の身を相手の立場に置いて考えるようにすると、そこから、ほんとうの意味の愛が成立します。それを仏教では「慈悲」とよんでいます。「慈悲」ということを、仏教ではまれに「愛」ということばで表現している場合もありますが、愛の純粋化されたものが慈悲である、ということがいえます。
だいたい上で言われちゃったけど、
全ては空であると理解すること、<空観>に至ることが上記経典の主旨。
<空>は一切の差別を消し去り、仏教本来の<慈悲>が実現する。
そしてこの<空観>は単なるニヒリズムではない。
この<空>は絶対無としての<空>。そう、生命力に充溢し、慈悲に向かう前向きな<空>なのだ。
住するところ無くして、しかもその心を生ずべし。
一切の有為法は、夢・幻・泡・影の如く
露の如く、また、電の如し。
まさにかくの如き観を作すべし。