生きて行く私
生きて行く私 (角川文庫) [文庫]
著者:宇野千代
評価:C
宇野千代の自伝。
尾崎士郎、東郷青児、北原武夫ら男をとっかえひっかえ。建てた家は13軒。
その放埓で直線的な生き方を、呆れ蔑みつつも羨ましく思っている自分を見つけてしまった。
“私は健康で、明朗であった。日本の中の、どこの都会、どこの街にいても、恰かも生まれ故郷にいるが如くに、自然であった。それは、私にとっては放浪ではなく、ただ、そこにいただけであった。そして、不思議なことであるが、いつでも何か仕事をしていて、いや、それは仕事でさえもない、いつでも自分の好きだと思うことをしていて、それによって生活の質を得ていた。
私は生きているどの瞬間にも、「虫が地面を這うように」「鴉が空を飛ぶように」自然であった。全人格を貫いて、それは自然であった。後の行動のどこにも、前の行動の痕跡はなかった。人に会い、たとえ心を奪われることがあっても、忽ち醒め、その間に、いささかの連関もないのは、常習のことであった”