【概要】
著者(監督):T・フィリップス 訳 禰冝田 亜希
人類の歴史を数々の視点から振り返り、「謙虚さが私たちの種の特徴だった例はない」「過ちを繰り返してきたし、これからもそうだろう」などと、英国人らしい皮肉さで我々をディスり倒す。原題が"How we f*cked it all up"であることからもお察し。
人間の高度なパターン認識能力の負の面、認知のゆがみの例(アンカリング・ヒューリスティック、利用可能性ヒューリスティック、確証バイアス)についてふれ、人間の未来予測能力には限界があり、近視眼的な利益を飽くことなく追及する仕様になっていることを指摘する。曰く「脳は自分が間違っていると気づくことを心底嫌っている」。
安易な外来種の持ち込み(猫、うさぎ)、中国の四害駆除運動、河川の流路変更、「ヨーロッパ人におなじみ」地元民虐殺、明の正徳帝やオスマンのムスタファ一世・ムラト四世や「無能で怠け者で自己中心的」なヒトラーといった暗君列伝、有鉛ガソリンやフロンといった化学物質の発明(アスベスト、DDTも)などなど、いかに人間が失敗を繰り返して今日に至っているかが語られる。なお、自国も棚に上げることなく、苛烈な植民地政策を行ったりBrexitに進もうとしている愚をdisっている。文中に出てくる「残念でした」「がんばったね」などのイヤミなアオリがさすがの貫禄だ。
【詳細】
<目次>
- 第1章 人類の脳はあんぽんたんにできている
- 第2章 やみくもに環境を変化させたつけ
- 第3章 気やすく生物を移動させたしっぺ返し
- 第4章 統治に向いていなかった専制君主たち
- 第5章 誰が誰をどう選ぶかの民主主義
- 第6章 人類の戦争好きは下手の横好き
- 第7章 残酷な植民地政策もヘマばかり
- 第8章 外交の決断が国の存亡を決める
- 第9章 テクノロジーは人類を救うのか
- 第10章 人類が失敗を予測できなかった歴史
<メモ>
「イッヌ」≒Doge