【概要】
著者(監督):井上ひさし
盲人の主人公が、殺人、悪どい取り立て、姦通など悪行の限りを尽くす。ひさしにしては残忍だが、演劇の特性を生かした遊び心のおかげでシリアスになりすぎず読める(観られる)。なかでも盲太夫の語りがいい仕事しすぎている。下ネタも多め。
- 「目の無いおれには銘のないこの正宗がぴったりだぜ」
- 「よし。殺さないから死ね。」
- 「国会見物 永田町、(…)陰部見物 床ノ中、(…)女子大見物 お茶の水、…」
などのダジャレやとんちがバッチリ効いている。
盲人仲間の保己市からは最後に里芋の意趣返しを喰らい、悪は栄えない結果となる。喜劇なのか悲劇なのか混然としているが、以下のような深みある言葉がポロっと出たりする。
晴眼者は盲人があらゆる意味でよくなって行くことを望まないんですね。いつまでも、盲が哀れで、愚かで、汚らわしいものであってほしいらしい。
【詳細】
<目次>
- 藪原検校
- 金壺親父恋達引
- 二通の手紙
<メモ>
〇盲大夫のいい仕事集
「ローマの休日」が訛ると「老婆の弓術」
⇒ダジャレ。
難解な言葉が飛び出すたびに、すかさず、無感情な早口で註を施す。この盲大夫の差出口の煩わしさは、引用癖のある学者の註だらけの論文を読むときに相当し、いらだたしさはそれ以上だ。
⇒狂言回しの特権を生かしてしばしば進行を止める。
ト、註釈を入れるので結解の右の拳は琴の位置の左頬の直前で停止。
⇒まさかの時間停止系能力者。
(杉の市を救うために)註の七! 一同の動作が一時停止。
⇒観客がどういう表情で観ていたのか気になる。
これは人員の関係で私がやる。
⇒語り以外の仕事もできる。
(仲間としてはとうとう見かねて怒鳴る)いいかげんにしなさい!
⇒下ネタも度が過ぎると怒られる。