Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

日輪 春は馬車に乗って 他八篇

日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (岩波文庫 緑75-1)

【概要】
著者(監督):横光利一

何気に初利一。「蠅」「ナポレオンと田虫」「春は馬車に乗って」あたりが面白い。機械的で客観的な視点が得意な印象を受ける。ちょっと他にはないタイプの感性を持っているみたい。「日輪」はそうでもなかった…。

 

【詳細】

<目次>

  • ナポレオンと田虫
  • 御身
  • 日輪    
  • 春は馬車に乗って
  • 機械    
  • 笑われた子
  • 花園の思想
  • 赤い着物


<メモ>

・笑われた子

「貴様のお蔭で俺は下駄屋になったのだ!」


蠅を上空から眺めるような冷徹・客観的な視点が珍しい。
宿場の人間模様を人間臭く描いた後は彼らを容赦なく奈落へ。容赦なし。

が、眼の大きな蠅は、今や完全に休まったその羽根に力を籠めて、ただひとり、悠々と青空の中を飛んでいった。

ナポレオンと田虫

まさかの組み合わせ。

この腹に田虫を繁茂させながら、なおかつヨーロッパの大地を攪乱させているナポレオンの姿を見ていると、それは丁度、彼の腹の上の奇怪な田虫が、黙々としてヨーロッパの天地を攪乱しているかのようであった。

春は馬車に乗って

風立ちぬ感。このシーンがやりたかっただろシリーズ↓

「とうとう、春がやって来た。」
「まア、綺麗だわね。」と妻はいうと、頬笑みながら痩せ衰えた手を花の方へ差し出した。
「これは実に綺麗じゃないか。」
「どこから来たの。」
「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先きに春を撒き撒きやって来たのさ。」
妻は彼から花束を受けると両手で胸いっぱいに抱きしめた。そうして、彼女はその明るい花束の中へ蒼ざめた顔を埋めると、恍惚として眼を閉じた。

・機械
殴り合い。