【概要】
著者(監督):横光利一
何気に初利一。「蠅」「ナポレオンと田虫」「春は馬車に乗って」あたりが面白い。機械的で客観的な視点が得意な印象を受ける。ちょっと他にはないタイプの感性を持っているみたい。「日輪」はそうでもなかった…。
【詳細】
<目次>
- ナポレオンと田虫
- 御身
- 日輪
- 春は馬車に乗って
- 機械
- 火
- 笑われた子
- 花園の思想
- 蠅
- 赤い着物
<メモ>
・笑われた子
「貴様のお蔭で俺は下駄屋になったのだ!」
・蠅
蠅を上空から眺めるような冷徹・客観的な視点が珍しい。
宿場の人間模様を人間臭く描いた後は彼らを容赦なく奈落へ。容赦なし。
が、眼の大きな蠅は、今や完全に休まったその羽根に力を籠めて、ただひとり、悠々と青空の中を飛んでいった。
・ナポレオンと田虫
まさかの組み合わせ。
この腹に田虫を繁茂させながら、なおかつヨーロッパの大地を攪乱させているナポレオンの姿を見ていると、それは丁度、彼の腹の上の奇怪な田虫が、黙々としてヨーロッパの天地を攪乱しているかのようであった。
・春は馬車に乗って
風立ちぬ感。このシーンがやりたかっただろシリーズ↓
「とうとう、春がやって来た。」
「まア、綺麗だわね。」と妻はいうと、頬笑みながら痩せ衰えた手を花の方へ差し出した。
「これは実に綺麗じゃないか。」
「どこから来たの。」
「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先きに春を撒き撒きやって来たのさ。」
妻は彼から花束を受けると両手で胸いっぱいに抱きしめた。そうして、彼女はその明るい花束の中へ蒼ざめた顔を埋めると、恍惚として眼を閉じた。
・機械
殴り合い。