編:柳沼重剛
評価:A
【評】
説明不要。
古今東西かわらない、旧くて新しい人間のいとなみが、ありありと蘇ってきますね。
<希臘篇>
21.蟹をまっすぐ歩かせるなどできぬこと。
25.すぐに古びてしまうものは何かと問われて、「感謝」だと彼(アリストテレス)は答えた。
26.deus ex machina.(羅)→劇のプロットとはかかわりのない安直な解決法
31. 長い話を切り詰めて、短い言葉で適切に語るのは賢い人である。
34. エロスは詩人を作る。たとえ以前は詩心のなかった者でも。
42. 言葉に打たれぬ者は、杖で打っても効き目がない。
44. 転がる石に苔は生えない。
46. 魚は頭から臭いはじめる。
54. 大胆な指揮官より、用心深い指揮官。
55. 人間には舌は一枚しかないが、耳は二つある。
60. 人生は短く、技術は長い。
61. 人生とは舞台で芝居だ。大まじめなことは脇へおいて演じることを学ぶがよい。それがいやなら、苦痛に耐えねばならぬ。
68. 現在の難儀もいつの日かよい思い出になるであろう。
81. 友のものは共のもの。
87. 汝自身を知れ。
95. 始めは全体の半分。
98. 万物の尺度は人間である。あるとものについてはあるということの、ないものについてはないということの。
99. あらゆるものは去り、何物も止まらぬ。
100. 同じ川に二度と足を踏み入れることはできない。
107. 保証人とならば破滅は近きにあり。
116. 水に書く。
119. 蟻にも羽蟻にも怒りがある。
120. (ソクラテスは)自分は何も知らないというまさにそのことだけは別として、それ以外の事は何も知らないのだと言っていた。
125. 老人は子供にかえる。
<羅馬篇>
7. 怒りは一時の狂気である。
8. 人の数だけ意見あり。
11. 早い死が輝かしいアキレウスを奪い、長い老年がティトノスを憔悴させた。
16. 喜んだ人は喜びの種を忘れるが、悲しんだ人は悲しみの種を忘れない。
19. われらが運命をどこに率い、どこへ引き戻そうと、あとに従おう。
21. 栄光を軽んずる者こそ、真の栄光を得るであろう。
26. われわれは、教えることによって学ぶ。docendio discimus.
27. ローマにはお節介屋の一団がいる。あちこち飛びまわり、何もやらないが忙しく、一文にもならないことにはあはあ言い、何もせずにそこらじゅうをかきまわす。
32. 恩恵をほどこした者は黙っているがよい。恩恵を受けた者は、語るがよい。
35. (カエサルの文章は)あらゆる修辞的装飾を、さながら衣服を脱ぎ去るごとくに捨て、まっすぐで美しい。
42. 機会は容易には与えられないが、容易に失われる。
48. 宴会の主催者の才は、将軍の才と同じように逆境がそれを明らかにし、順境はそれをかくすものだ。
49. (今日という)日を摘み取れ。carpe diem.
50. もろもろの学芸を知っているというまさにそのことが、直接それを扱っていない場合でも、われわれの身を飾り、思いもよらぬときに、現われてくるものだ。
51. 捕らわれのギリシャは、野蛮なる勝利者を捕らえました。
55. 人生は人間に、大いなる苦労なしには、何も与えぬ。
60. 健全な精神が健全な身体に宿りますようにと祈るべきである。
63. 恋は涙のように、目から発して胸に落ちる。
74. 心は今を喜び、それを越えた先を思い煩うことを厭い、伸びやかに笑みを浮かべて、苦しいことを和らげよ。あらゆる点で幸せというものは、何一つありはせぬのだ。
75. すぐれたホメロスでも居眠りをすることがある。
81. この主人にしてこの奴隷ありだ。
82. 賽は投げられた。iacta alea est.
83. 財産は、賢者にあっては奴隷の地位にあるが、愚者にあっては支配者の地位にある。
84. 飲む理由はたくさんある。
93. 私は生きおえた。運が私に与えてくれた筋道を、私は歩き通したのだ。
97. 次の世代に役立つように、彼は木々を植える。
101. 何を笑うのか。(登場人物の)名を(おまえの名に)変えれば、この話はおまえのことを言っているんだぞ。
105. 人間は自分が信じたいことを喜んで信じるものだ。
108. 知恵を伴わなくても正義は大いに強力なものだが、正義を書いた知恵はまったく通用しないであろう。
121. 多読より精読すべきだと言われている。
123. 多くを求める者には多くのものが足りませぬ。神が控えめな手をもって授けたもうたものにて足れりとする者こそ豊かなのでございます。
128. 黄金の中庸。
131. 牛は角によって捕らえられ、人は言葉によって縛られる。
134. 力があると思うゆえに力が出る。
135. ひとたび過ぎ去った時は、ユピテルすら取り戻すことはできぬ。
137. 隣の畑は大きく、いい畑に見える。
149. 習慣によって、いわば第二の天性が作られる。
152. 二兎を追うものは一兎をも得ず。
160. (民衆が)熱心に求めるのは、今や二つだけ:パンとサーカス。
166. 目で見た一人の証人は、耳で聞いた十人の証人より値打ちがあるんだぞ。
175.何事にも驚かないということが、人を幸福にし、幸福に保つことができるただ一つの道だ。
176. 不要なものは一文でも高い。
180. ……文学は、青年の精神を研ぎ、老年を喜ばせ、順境を飾り、逆境には避難所と慰めを提供し、家庭にあっては娯楽となり、外にあっても荷物にならず、夜を過ごすにも、旅のおりも、バカンスにも伴となる。
190. 余は汝がいずれなるであろうところのものにして、かつては、汝が今かくあるところのものなりき。
Sum quod eris, fui quod sis.
193. すべての日がそれぞれの贈り物をもっている。
196. 黙っていても、顔が声と言葉をもっていることがよくある。
199. ゆっくり急げ。
208. 平穏にして温和な老年は、静かに、清く、優雅に送られた生涯の賜物である。