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あの戦争は何だったのか

あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)
あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 (新潮新書)
著者:保阪正康
評価:B+

まずこの本の(はじめに)において、著者は、
日本という国は、あれだけの戦争を体験しながら、戦争を知ることに不勉強で、不熱心。日本社会全体が、戦争という歴史を忘却していくことがひとつの進歩のように思い込んでいるような気さえする。国民的な生活の弱さ、狡さと言い換えてもいいかもしれない。日本人は戦争を知ることから逃げてきたのだ。
と書いており、大きく衝撃を受けた。
確かに割合太平洋戦争について興味があるほうなのだが(といっても戦闘機や戦艦の名前を暗記するのを無上の喜びとする類の人間ではない)、その興味も所詮は表層的なもので、この戦争自体の内奥にまで迫って考えたことはなかったかもしれない。
言われてみれば日本人は、太平洋戦争についての話題をややタブー視しているようなきらいがあるし、そもそも若い世代は興味すら持っていないように思われる。なんせJ程度ですら物知りだと言われるくらいだから。

この本は全五章から成り、第一章において旧日本軍の構造、第二章では開戦に至るまでの経過とその分岐点、第三章では戦況の変化、第四章では敗戦、そして第五章では戦後の日本について、多くの引用をうまく交えながらかいつまんで書かれている。太平洋戦争の「流れ」をつかむにはまたとない名著ではなかろうか。
とりわけ第三章の、
「戦争を終結させる」とはいわない、なにせまともに「戦争の終結像」すらも日本の首脳部は考えていなかったのだから。でも、せめて”綻び”が出始めた昭和十七年末の段階で、「このままの戦い方でいいのか」、あるいはもっと単純に「この戦争は何のために戦っているのか」と、どうして立ち止まって、誰も顧みなかったのか。
という箇所が強く印象に残った。「大本営」は、日本の組織が陥りやすい忌むべき体質の好例といえよう。

(あとがき)に、
戦略、つまり思想や理念といった土台はあまり考えずに、戦術のみにひたすら走っていく。対症療法にこだわり、ほころびにつぎをあてるだけの対応策に入り込んでいく。現実を冷静にみないで、願望や期待をすぐに事実に置きかえてしまう。太平洋戦争は今なお私たちにとって”良き反面教師”なのである。
とあるように、日本人の国民性の根本が数十年で大きく変わるわけではないからこそ、その国民性がこれでもかとにじみ出た太平洋戦争について考えてみることが重要である。

若い世代の人間こそ新鮮な目でこの戦争について考えられるのではないか?
いや、考えてくれなければ困る。