サム・ジーヴァ帝国図書館(Javaさんのお部屋)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

王妃 マリー・アントワネット

著者:遠藤周作
評価:B

著者円熟期の作。「パンがなければ~」発言は残念ながら登場しない。
マルグリットら民衆視点と王妃視点が切り替わりながら物語は進行する。
多少創作も紛れ込んでいるが、陰謀渦巻くフランス革命前後の血に塗れた様子が窺えて興味深い。
王妃が自身の内面を見つめるとき、マルグリットとアニエスの思想が対立するとき、キリスト教が顔をのぞかせる。
運命の流れとともに変わっていく王妃の内面をチェキラウ。


“死者にはもう用はない。廷臣たちは今日から新しい国王、新しい王妃の寵愛を得るため、昨日までのすべてを忘れ、すべての派閥から離れ、昨日までのすべての友と袂を別って、あたらしい権謀術策に生きるのだ”

“「最後まで心をちゃんと」――民衆の罵倒や憎悪の叫びのなかで姿勢をのばし、正面を向き、優雅を守り、王妃としての威厳を死守すること――それだけが彼女の武器だったのだ。断頭台まで美しく、典雅であることがマリー・アントワネットの誇りだったのだ”

 “アニエスは革命が正しいと信じてきた。貧しい者がその悲惨の中で希望を失っているのに一握りの富者、貴族、権力者、宗教者がそれを黙殺し、それを神の定めとしている社会組織に耐えられなかった。イエスの教えとはその組織はあまりにかけ離れていると思った。
 だが現実に見た革命は派閥の争いとスパイと暴力と血の匂いによって動いていた。昨日まで手を握っていた者が今日はたがいに探りあい、相手をギロチンに送りこむ。不信と猜疑とが罪なきものを罪人となすこともあった”