【概要】
著者(監督):家島彦一
記憶を頼りに口述筆記したバットゥータおじさんの大旅行記。正式名称は『諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物』。そんな東洋文庫『大旅行記』を訳した著者が摘要を解説。曰く「こうした記録のすべてが事実であるのか、あるいは空想の所産にすぎないのかを判断することは難しいが、波瀾万丈の彼の体験は、読者の心を強く引き付けて夢中にさせる」。
アレクサンドリア、カイロ、ダマスカス、メディナ、メッカ、イスファハーン、バグダード、コンスタンティノープル、デリー、泉州、大都 当時の文明世界のほとんどを経巡った模様。イスラーム世界以外は主に陸路、他は主に海路。イスラーム世界の相互扶助システムや人・情報・金融のネットワークの発達ぶりがゴイスー。
学術研究や見聞を広げたりする一方で、同じ旅行グループの人と結婚したり女奴隷とチョメチョメしたり、デリーやマルディヴ諸島に長期滞在したり(もっとも精彩に富む部分)賊に襲われたり、人生を楽しんでいる。偶然の旅の好機捉えて足を延ばしたり、「出来る限り私がすでに通ってきた同じ道をたどらない」という旅の哲学を実行したり旅人ガチ勢を地で行っている。
これを本格的に訳した著者の現地学への熱意も立派。原典に当たって現地の気候風土を知ることが大事。
【詳細】
<目次>
- 序章 イスラームと旅・移動
- 第1章 拡大する一三・一四世紀のイスラーム世界
- 第2章 『大旅行記』という書物
- 第3章 イブン・バットゥータの旅(1)―タンジールからメッカまで
- 第4章 イブン・バットゥータの旅(2)―中東世界からキプチャク大草原へ
- 第5章 イブン・バットゥータの旅(3)―中央アジアとインド
- 第6章 イブン・バットゥータの旅(4)―東南アジアと中国
- 第7章 イブン・バットゥータの旅(5)―アンダルスとブラック・アフリカ
- 結び イブン・バットゥータの旅の虚像と実像
<メモ>