【概要】
著者(監督):井上ひさし
よくまとまっている。
その日暮らしの奇術師一家を主人公に、夫婦・師匠と弟子・妻と弟子、三者の情愛をユーモアを交えて描く。どの話も人間味があって捨てがたいが、「その春の奇術探偵団」「月なきみそらの天坊一座」が良いか。かわいい子には旅をさせよとばかりに弟子を送り出した夫婦の胸中いかばかり。
ライデンフロスト効果や取寄せ、透視術、高速計算法などの種明かしもあって何だか得した気分になる。
【詳細】
<引用>
「星の左右にひとつずつ小さな星のあるのが見えてきた。(ひっそり寄り添って、小さくかたまって……、まるでおれたちのような星たちだ)と、お浜の歌声のせいで感傷的気分に漬かりはじめていた天坊は思った。(いつまでもこうやって寄り添い合って暮したい。そのためにおれもよほどがんばらねばいかん)」
「お金を頂戴すれば失敗は許されないが、無料では気がゆるむ。その気のゆるみが芸の敵……」
「奇術で大事なのは、トリックよりもむしろパフォーマンスやプレゼンテーションなのだ」