【概要】
著者(監督):中尾政之
工学的失敗事例をたくさん集めた。エンジニアたるもの、機械工学・金属工学・化学工学・電気工学・人間工学など広範な学問分野に通じていることが要求される。また本書、抽象化(上位概念の抽出)と具体化(事例の水平展開)のトレーニングになる。エンジニアの必修書と考えるが如何。
【詳細】
失敗知識を学ぶことは、「概念を言語化してから、上位概念に昇ったり下位概念に降りたりする思考運動」。
「つまり、たとえば」を無理にでも使っているうちに、しだいに思考の昇降運動は活発になる。
タイタニック脆性破壊からポケモンパニックまで200弱の失敗事例を蒐集した。
アイボルトの取り付け位置、オリフィスのキャビテ―ション、逆止弁Oリングの劣化による逆流、予期せぬ触媒としてはたらく水や鉄など、こんなん予見できんわ! となること請け合い。エンジニアの業の深さを感じられる。
しかし事故が起こった場合、
a)ほぼゼロの確率の事象を予見できるはずがなく、自分の過失ではない
b)エンジニアの倫理観に従った、恥じることのない対処である
a)b)のどちらを選択しようとも、自分の答えを用意しておかなければならない。
とのこと。
内容は多岐にわたる。
「作業を憎んで人を憎まず」「装置の上が平らだと、使用者は必ず何かを置く」といった人間工学的視点。
「気合の入れ直し」ではだめで、「ハイテクなしでは事故がなくならない」という気合い排除。
「日本政府は総じて心情的な安心を重視して、規制が安全側に設定されるので、大体すべてが禁止・未許可・隔離になる。そしてその後に、科学がここまで安全だと明らかにしても、その設定ラインを様に変更しない」というゼロリスク信仰。
「機械の“失敗の三兄弟”は、疲労、腐食、摩耗である」
「化学分野では、セベソ、ボパール、フリックスボローが古典的な三大事故である」
ちょっと違うけどこんなサイトもあるよ。