Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

田辺聖子の小倉百人一首

著者:田辺聖子
評価:B+

【概要】
歌や歌人にまつわる逸話やトリビア、笑い話、思い出すことなど、百人一首を一首ずつ解説していく。ダメな歌はダメ、良い歌は良いと容赦なく斬っていく。やっぱり「春すぎて」「ちはやぶる」などの鮮やかなのが好きかな。女性ゆえ女流歌人には優しく同情的、男には厳しく辛辣。

【詳細】
万葉から当時までの歌を集めたアンソロジー。の聖子ver.
百人一首の中には、ずいぶん阿呆らしいような愚作や駄作がいっぱいある」の言葉からもわかるように、けっこう毒舌な著者。
男女や歌人たちが交わしたであろう雅で艶なやりとり、政争などのドロドロ裏話や歌をもじった落語、男の小言などなど、いろいろなことを教えてくれる。
ミヤビでアデな挿絵も魅力。

<さんじゃばセレクション>
1.秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

2.春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

3.あしひきの 山鳥の尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

4.田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

5.奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きくときぞ 秋はかなしき

7.天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも

9.花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに

10.これやこの 行くも帰るも わかれては しるもしらぬも 逢坂の関

12.天つ風 雲のかよひ路 吹きとじよ をとめの姿 しばしとどめむ

14.みちのくの しのぶもぢずり たれ故に 乱れそめにし われならなくに

15.君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ

17.ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

18.住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ

20.わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ

22.吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ

23.月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど

24.このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに

26.小倉山 峰のもみぢ葉 こころあらば 今ひとたびの みゆき待たなむ

28.山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば

33.久方の 光のどけき 春の日に しづこころなく 花の散るらむ

35.人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける

37.しらつゆに 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

40.忍ぶれど 色にいでにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで

41.恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか

43.あひみての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり

44.逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし

47.八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり

50.君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

53.なげきつつ ひとりぬる夜の 明くるまは いかに久しき ものとかは知る

54.わすれじの 行末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな

55.滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞えけれ

56.あらざらむ この世のほかの 思い出に いまひとたびの 逢うこともがな

59.やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな

60.大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立

61.いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな

62.夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ

63.今はただ 思ひ絶へなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな

64.朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代

66.もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

70.さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮

71.夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く

77.背をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

80.長からむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ

81.ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる

84.ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき

89.玉の緒よ 絶えねば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする

92.わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾くまもなし

98.風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける

<語や文法、古典常識>
「王朝の「人」は、女を指すことが多い」「通うのはもっぱら男で、女はもっぱら待つのである」「素腹の妃、というのは<うまずめ>というよりも物凄いワルクチである」

<男への小言>
「日本の男性は(中略)自分よりも年下の、ひよひよぴいぴいのあまっ子ばかり相手にするのである」

<参考文献>
列樹「昨日といひ 今日とくらして あすか川 流れてはやき 月日なりけり」