Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス (新潮文庫)
【概要】
著者(監督):原田マハ

絵画ミステリー。美術研究者2人の奇妙な鑑定バトルと、絵画「夢」に関するアンリ・ルソーのありえたかもしれない物語。それらを現代のルソー展が導く27年越しの邂逅でサンドイッチする。「この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。……それだけです」絵画を愛するが故の意外な結末。二本立て感があっておいしい。

著者の経歴が生み出す筆致が物語世界の質量を増す。ルソーとMoMAの宣伝、日本式展覧会の内実、大原美術館や岡山弁など、見どころは結構ある。そしてMoMA行きたみが募る。


【詳細】

<引用>

  • 偶然、慧眼、財力。名作の運命は、この三つの要因で決定される。
  • 見る者の心を奪う決定的な何かが、絵の中にあるか。「目」と「手」と「心」、この三つが揃っているか。それが名画を名画たらしめる決定的な要素なのだ。
  • 自分がやりたい展覧会を完璧に実現させるためには、美術に関する知識やセンス以上に、人海戦術と交渉力、そしてときには色気が必要になってくる、(美術館の支援者やコレクターの夫人たちの)夫や若いツバメにはない知的な色気が。

 

「なんとなく、わかったんです。そのとき、ルソーの気持ちが。彼はアートだけを見つめていたわけじゃない。この世界の奇跡をこそ、みつめ続けていたんじゃないかな、って」

生真面目な人物像も、不思議な形のエッフェル塔や飛行船も。草いきれのする密林も、沈みゆく真っ赤な夕日も。ライオンも、猿も、水鳥も。横笛を吹く黒い肌の女も、長い髪の裸婦も。

画家の目が、この世の生きとし生けるもの、自然の神秘と人の営みの奇跡をみつめ続けたからこそ、あんなにもすなおで美しい生命や風景の数々が、画布の上に描かれ得たのだ。唯一無二の楽園として。

 

 

「今回は、まるで私にとっては『楽園』でした。毎日、ルソーが主人公の冒険物語のような資料を読めて、ルソーのこと、あの頃の芸術家のこと、ひとときたりとも忘れずに考えて、心を添わせて。……この数日間、まさしく、この場所は『美術の楽園』のようでした」

 

この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。……それだけです