Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

青春を山に賭けて

青春を山に賭けて

【概要】
著者(監督):植村直己

男は、一度は体をはって冒険をやるべきだ。

伝説の冒険家ナオミ。もはや古典。真のコミュ力と情熱、とりあえずやってみる精神を学べる。青少年が読んじゃうと冒険に出たくなっちゃうかも。

明大山岳部で山に魅せられ単身渡米したナオミ、苦難にあっても天性の人たらし能力とド根性で運命を切り拓く。肉体労働で金を貯め、マッターホルンキリマンジャロアコンカグア⇒(アマゾンイカダ下り)⇒エベレスト⇒マッキンリーと五大陸最高峰を20代にして登頂する。そこで夢は終わらず南極単独走破へ。つづく!

テンポがよく、軽妙で時にはセンチメンタルで、不思議と読ませる文章。通勤中のバス乗車時間を盛り上げてくれた一冊。エベレストで頂上を先輩に譲るエピソードが有名だが、ナオミがええ奴そうなのが文章から伝わってくる。   

出逢いに恵まれている。職探しの鬼電、果樹園での肉体労働と淡い恋、そして強制送還の危機のとき、日本語で調査官にぶつけた自分の主張。このあたりの成功体験がその後のモンブラン以降の冒険を支えているんじゃないだろうか。キリマンジャロ行の船上での交流(腕相撲、歌)、若い兵隊と仲良くなって得た体操室の使用許可、アコンカグア登山申請時に手持ちの登山具で実演・ピエロ熱演、などなど言葉は不十分でも天性の人たらし能力で誰もを味方につけていく。「三年以上もよくわからぬ外国語の世界で暮らした私は、わからぬ話を本能的に察知するカンがあった」←めちゃ重要な能力(; ・`д・´)

boukenkan.com

 

【詳細】

<目次>

  • 青春の日々
  • 山へのプロローグ
  • アルプスの岩と雪
  • 朝焼けのゴジュンバ・カン
  • マッターホルンの黒い十字架
  • アフリカの白い塔
  • 忘れ得ぬ人々
  • アンデス山脈の主峰
  • 六十日間アマゾンイカダ下り
  • 王者エベレスト
  • 五大陸最高峰を踏破
  • 地獄の壁グランド・ジョラス


<メモ>

どんな小さな登山でも、自分で計画し、準備し、ひとりで行動する。これこそ本当に満足のいく登山ではないかと思ったのだ。

 

私はシュラフの中で、エベレストのこと、アマゾン河のイカダ下りのことなど、過去のできごとを思いうかべた。それは実に楽しかった。アマゾンのことなどは、まったく昨日のできごとのようにまざまざと思い出された。それはカラー映画のようでさえあった。私にとって、過去のできごとは、まったく心の宝であった。

 

1965年から1970年までの過去6年間、私は8000メートル峰ひとつ、7000メートル峰ひとつ、6000メートル峰三つ、5000メートル峰三つ、4000メートル峰五つの十三の山を登攀した。五大陸の最高峰に登頂する目的は、マッキンリーをもって終了した。そして、1970年末に冬季グランド・ジョラス北壁の挑戦をやってのけた。

はじめて氷河に足を入れ、ヒドン・クレバスに落っこちたモン・ブラン。豹、野獣におびやかされ、ピッケル一丁を武器に登ったケニヤ山。麓から15時間の速攻で一気に登った南米のアコンカグア。大部隊で登ったエベレスト。恐怖のどん底にあった60日間のアマゾンのイカダ下り……。

金もなく、無性に登りたい一心からはじめた世界山登りの旅であった。アメリカでの資金づくり。カリフォルニアの農場では労働許可証も持たずに働いた。アメリカの移民局に見つかり、鉄格子の牢にぶち込まれ、本国送還の直前に、旅の目的を必死に打ちあけたおかげで、移民局の寛大な処置に助けられヨーロッパ入りをした。こうして私の世界山旅がはじまったのだ。

ゴジュンバ・カン(7646メートル)のヒマラヤ遠征隊参加の後、隊員と別れて再び第二の故郷フランスに帰ると、無一文の中で黄疸におそわれ、一ヵ月間病床に伏した。途方にくれている私を、冬季オリンピックの滑降の優勝者、ジャン・ビュアルネ氏がひきとってくれた。インド、ネパールでも、南米でも、またマッキンリー登山でも、旅の先々で多くの現地民、日本の方々に強い援助や協力をうけ、ついに私の目的は全部達成できた。

今日まで、私は25,6ヵ国をかけめぐったが、誰ひとりとして悪人はいなかった。ドウモウだから注意せよと警告されていたインディオ、ヒマラヤの山岳地帯に住むシェルパ族、また、アフリカのヤリを持つマサイ族にも、言葉は通じなくても心がかよった。単独登山とは、確かに自分ひとりでやるものであるが、周囲のたくさんの人々の協力あおがなければ絶対にできないことだ。

こうして五大陸の最高峰を自分の足で踏み、さらにアルプスの中でも特にむずかしい冬期の北壁の登攀に成功したいま、私の夢は夢を呼び起こし、無限に広がる。過去のできごとに満足して、それに浸ることは現在の私にはできない。困難のすえにやりぬいたひとつ、ひとつは、確かに、ついきのうのできごとのように忘れることのできない思い出であり、私の生涯の糧である。しかし、いままでやってきたすべてを土台にして、さらに新しいことをやってみたいのだ。若い時代は二度とやって来ない。現在(1971年)、私は29歳、思考と行動が一致して動くのは、ここ一、二年だろう。経験は技術である。いまが私にとって、いちばん脂がのり、自分で何かができる時期である。南極大陸の単独横断。南極大陸を、たったひとりでイヌとソリでやってのけるのが、私の最後の夢である。

つづく!