Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

ローマ字日記

啄木・ローマ字日記 (岩波文庫 緑 54-4)

【概要】
著者(監督):石川啄木 編訳:桑原武夫

わざわざローマ字で書かれた怪しい日記。所帯持ちとは思えないほど金と下半身がゆるいような。孤独と自信、漂泊の思い、何者かへの憧憬など、いろいろな思いがアルファベットで言語化される。

桑原が普通の日本語表記に書き下してくれているので安心。


【詳細】
桑原曰く、ローマ字表記によって逃れることができた抑圧

①それが家族の人々には読まれない、という意味で精神的、さらに倫理的抑圧

②日本文学の伝統の抑圧

③それらをもふくめて、一般に、社会的抑圧

 

自分の行為や心理をこうまで赤裸々に描くのは難しい。

たいてい修飾や韜晦が入るものだが、この日記にはそういったものがないように感じられる。

 

<引用>

Yo no hossuru Mono wa takusan aru yō da: sikasi jissai wa hon no sukosi de wa arumaika? Kane da!

 

to ni kaku Nani ka wo sinakereba naranu yō na Ki ga site, donnna Nonki na koto wo kangaete iru toki de mo, syottyū usiro kara 'Nani ka' ni okkakerarete iru yō na Kimoti da. Sore de ite, nan ni mo Te ni tukanu.

 

こんな具合だが読むのが疲れるので普通に表記する。

いくらかの金のあるとき、予は なんのためらうことなく、かの、みだらな声にみちた、狭い、きたない町に行った。予は 去年の秋から今までに、およそ13-4回も行った。そして10人ばかりの インバイフを買った。ミツ、マサ、キヨ、ミネ、ツユ、ハナ、アキ……名を忘れたのもある。予の求めたのは 暖かい、柔らかい、まっ白な からだだ:からだも心も とろけるような楽しみだ。(中略)

なん千人にかきまわされた その陰部には、もう筋肉のしゅうしゅく作用が なくなっている、緩んでいる。ここには ただ ハイセツ作用の行われるばかりだ:(中略)

しまいには 五本の指を入れて できるだけ強く おした。女はそれでも 目をさまさぬ:恐らく もう陰部については なんの感覚もないくらい、男になれてしまっているのだ。なん千人の男とねた女! 予は ますます イライラ してきた。して いっそう強く手を入れた。

 ド直球の下ネタをどんな気持ちで書いていたのだろう。

 

汽車に乗りたい! そう予は思った。どこまでというアテはないが、乗って、そして まだ行ったことのないところへ行きたい!

 そういうこともあるよね。

 

予の生活の基礎はできた。ただ下宿をひきはらう金と、うちを持つ金と、それから家族を呼びよせる旅費! それだけあればよい! こう書いた。そして死にたくなった。

 

金を自分が持つか、しからずんば、責任を解除してもろうか: ふたつにひとつ。

おそらく、予は死ぬまでこの問題をしょって行かねばならぬだろう! とにかく ねてから考えよう。(夜1時)

ダメ男感がさすが。 

 

シブタミ! 忘れんとして忘れえぬのは シブタミだ!

シブタミ! シブタミ! われをそだて、そして迫害したシブタミ!……予は泣きたい、泣こうとした。しかし涙が出ぬ!……

われ泣きぬれて… 

 

予は キンダイチ君から借りてきてるカミソリで胸に傷をつけ、それを口実に 社を1カ月も休んで、そして自分のいっさいを よく考えようと思った。そして 左の乳の下を切ろうと思ったが、痛くてきれぬ: かすかな傷がふたつか みつ ついた。