Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

四月は君の嘘

監督:イシグロキョウヘイ
評価:A

【評】
<総括>

物語の筋は定番ではあるが、心象風景の表現や交わされる言葉の深み・重みなど、それを補って余りある魅力がある。
少年少女の恋愛譚でもあり、公生の自立の物語でもあり、同年代のライバルと高め合い影響し合い切磋琢磨する物語でもあり、藝術の素晴らしさを謳う物語でもあり…と多様な読みを許すところは、まさにジュヴナイル群像劇の総決算といえる。
私も、諦めそうになったときには「アゲイン!」とこちらを振り返り微笑むかをりちゃんを思い出して、逃げずに闘い続けたいと思ったね。
 
そして、恋と音楽をしたくなったね。
どちらも私には無縁のものだったけれど…。
私たちも、「君だよ  君なんだよ」と言われるだけの想い出を相手の心に刻みつけたいね。
そう、忘れ去られたとき、人は真の意味で死ぬのだから…。
 
<ストーリィ>
僕にはモノトーンに見える
譜面のように 鍵盤のように


「五線譜の檻」から抜け出せずにいた公生君が、
「天真爛漫・奇想天外・傍若無人・唯我独尊・ジェットコースター」かをりチャンに
世界がカラフルに色づいていることを思い出させてもらった。

四月に始まった心のリハビリは、春一番のように荒療治であった。
感情の緩急烈しいかをりは、泣き落とし、叩く殴る蹴るの暴行をハイブリットし公生をコンクールに連行する。
集中するとピアノの音が聞こえなくなってしまう公生。諦めてしまう公生。言い訳を探す公生。
だが、かをりは公生とアゲインすることを選んだ。
旅に出よう。
この先は暗い夜道だけかもしれない
でも、信じて進むんだ
星がその道を、少しでも照らしてくれるのを
光が見えた。立ち上がる公生。終盤になってようやく調和したふたりは、最高の演奏で幕を閉じた。
この一連の、視聴者に「がんばれ!」と言わせるまで登場人物をいじめぬいて、直面した困難や苦しみに打ち克つプロセスが、カタルシスを生むんだなあ。

まあこんな感じで自身の特性を知り、オカンのトラウマを克服し、表現者として成長していく公生。
そんな中、かをりに抱いていた憧れという感情は、いつしか恋であったことに気付いていく。
だが、一方のかをりは転倒、薬の大量服用、青白くなっていく顔や色や唇などの表現に見られるように、舞台から退場していく。
将来の夢よりも今。その言葉は何を意味するのか?
聴衆を魅了したあの協奏はもう見られないのか?
 
また動き始めた公生と、動きを止めたかをり。
アゲイン。今までのお礼とばかりに、公生の演奏はかをりの背中を押した。
あこがれてあこがれられて、またあこがれて、
この循環が人の人生を豊かにしていくのだ。
背中を押されたかをりは、公生に自分の決断を伝えた。

迎えた運命の日。
胸に去来するあの娘の言葉。想い出がちらついて、胸をしめつける。
顔を上げると、光に包まれ、世界は蒼く染まっていた。
ピアノには青空と白雲が刻々姿を変えながら流れて行く。
ヴァイオリンを携えたかをりが現れ、最期の協奏がはじまった。
OPに描かれた心象風景はここに成った。
「さよなら」

季節が一ト巡りして春が来た。
違和感あるタイトルの謎も解けた。
「僕らは誰かに出会った瞬間から一人ではいられないんだ」。
公生の心に土足で上がこんで来たかをりは、深く豊かに彼の心に刻まれた。
忘れられない想い出は、実り多き生を彼に約束するだろう。
きらきら星のようにいつまでも、どこまでも、彼を照らし続けるだろう。

愛の喜びと悲しみを知った彼は、これからも音楽で人の心を豊かにしていくだろう。

 
度胸橋から飛び込んだ川は、冷たくて気持ちよかったね
音楽室を覗くまんまるの月は、大福みたいでおいしそうだった
競争した電車には、本気で勝てると思った
輝く星の下で二人で歌ったきらきら星、楽しかったね
夜の学校って、絶対なんかあるよね
雪って、桜の花びらに似てるよね
演奏家なのに舞台の外のことで心がいっぱいなのは、なんかおかしいね
忘れられない風景が、こんな些細なことなんておかしいよね

おかしくないで。
ありがとう。

<表現編その他>
やっぱり演奏回がアツい。 
演奏シーンの鬼アニメーションもさることながら、その構成がそれぞれに異なっているのが印象的だった。
①かをりんヴァイオリン(ソロ):再生の序曲
②かをりん+KOSE(アンサンブル):アゲイン戦
③KOSE(ソロ):復帰戦
④KOSE(ソロ):トラウマ浄化戦
⑤KOSE+相座妹(連弾):指導者覚醒戦
⑥KOSE+霊かをりん(ソロと見せかけての):さよなら戦

基本的にモブが動かないのは、演奏時のアニメーションと好対照をなしている。

  • 「有馬くん」「西園さん」という呼び名に、お互いの気持ちを伝えられない二人の想いが現われていて良かったですね。過去のエピソードがたびたびリフレインする演出も好きですよ。
  • 泣き顔、笑い顔、涙、上気した顔、汗などはイシグロ監督の趣味でしょうか。
  • アゲインや日常の音楽が耳に残りますね。深海の表現や、鍵盤音が聞こえなくなる表現など、視覚に比して聴覚割合が多くなるアニメですね。
  • 最期の演奏、言葉がないのはよかった。そのあと、お手紙会話するのは、もっとよかった。
  • 腐でしたね。
  • 主要4人組の運動部・文化部、女・男の2on2配置は面白かったですね。椿がアドバンテージを失っていくのは悲しくなりましたが…。
[追記]
サントラでショパンのバラード1番(ようつべにはバイオリンあり版もあり)をエンドレス再生しているぞい。もはやこのアニメ専用曲みたいな感あるね。
「くじけそうになる私を 支えてください」「私がいるじゃん」「私は、君の心に住めたかな」「ありがとう」など、いろいろなセリフがリフレインするよね。

原作公式サイト引用元もおもしろいよ。