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恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇

著者:菊池寛
評価:B+

【評】
表題作二篇がグッド。あとは『俊寛』かな。
菊池寛の小説力に瞠目せよ。

『忠直卿』
考えて見ると、忠直卿は今日の華々しい勝利のうちでも、どこまでが本当で、どこからがうそだかわからなくなった。否今日のみではない、生まれて以来幾度も試みた遊戯や試合で、自分が占めた数限りのない勝利や、優越のなかで、どれだけが本物でどれだけがうそのものだか、わからなくなった。

『恩讐』
それは、もはや人間の心ではなかった。喜怒哀楽の情の上にあって、ただ鉄槌を振るっている勇猛精進の菩薩心であった。
敵と敵とが、相並んで槌を下した。実之助は、本懐を達する日の一日も早かれと、懸命に槌を振るった。
敵を打つなどという心よりも、このかよわい人間の双つの腕によって成し遂げられた偉業に対する驚異と感激の心とで、胸がいっぱいであった。彼はいざり寄りながら、再び老僧の手を執った。二人はそこにすべてを忘れて、感激の涙にむせび合うたのであった。