知覧からの手紙 [単行本]
著者:水口文乃
評価:B
"有名な"手紙らしい。「会いたい、話したい、無性に」と、割と率直に心情を吐露しているのが特殊なのだろう。
利夫さんと智恵子さんが、一度は婚約したとはいえ、ずっと清純なおつきあいをしていたところに好感が持てる。決して長くはない交際期間に二人が交わした手紙の文句や、照れくささからか実際に会うと言葉が出てこないところは、なかなか可愛らしいものであり、彼らの実直な性格を感じる。
極限まで魂の練磨をつづける利夫さんはもちろん、さまざまなことに苦悩する智恵子さんも見所である。現代の乱れた若者たちは大いに見習ってほしいところである。
搭乗員の技量の低下や彼我の戦力差を考慮しても、特攻という戦術は明らかに異常であったが、特攻隊員たちの思いは汲んであげなければならない。この特攻という行為が、良くも悪くも日本人を日本人たらしめている一因なのだと思う。
ちなみに自分は下の文句が好きだ(海軍軍属 石田 正夫 の遺書)。
もし玉砕して、そのことによって
祖国の人達が、少しでも
生を楽しむことができればと
せつに祈るのみである
遠い祖国の若き男よ
強く逞しく、朗らかであれ
なつかしい遠い祖国の
若き乙女たちよ
清く美しく、健康であれ
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