著者(監督):猪瀬直樹
【概要】
急ごしらえの「総力戦研究所」で「模擬内閣」が導いたシミュレーション結果と、実際の歴史を重ね合わせながら、旧憲法の欠陥や主観に頼った意志決定を浮き彫りにする。総力戦シミュレーションが本当に行われていたことや、その結果が現実に忠実なことに驚く。その結果を知りながら破滅に進んで行ったことにも。
机上演習なのか実際の歴史的経過なのか話が分かりにくいのがやや残念。
【詳細】
現実の内閣と、模擬内閣はほとんど同時に発足し、対照的な結論に向かって歩を進めていく。ただこの時点で、二つの内閣の閣僚たちは、ともに自らの運命を知る由もなかった。
“事実”を畏怖することと正反対の立場が、政治である。政治は目的(観念)をかかえている。目的のために“事実”が従属させられる。
数字の客観性というものも、結局は人間の主観から生じたものなのであった。
生産力統計データから導いた必敗の結論に立脚し、窪田内閣総辞職。
残念ながら、この検討(健闘)をもってしても戦争への破滅行を止めることはできなかった。まさにアイ・アム・ソーリー(総理)。
日本の意志決定に欠けているのは、今も昔も、そういうディテールの積み重ね。ディテールにこそ、神は宿る。この作品で、ディテールを積み重ねれば真実にたどり着くという希望を語りたかったのです。