評価:B
【概要】
細菌やウイルスと人類の絶えざる争いを描く。マラリアや梅毒、エイズなどの感染症が歴史上の人物・事件に与えたダイナミックな影響を窺い知れる。この著者の本は非常に読みやすい。
【詳細】
近代と歩調を合わせ、古今東西のあやしげな医薬療法信仰が科学に変わっていく。
ビタミンC(対壊血病)にはじまり、キニーネ(対マラリア)、サルバルサン(対梅毒)、モルヒネ、麻酔薬、消毒薬、サルファ剤、ペニシリン、アスピリン、そしてエイズ治療薬まで。
感染症が歴史上の人物・事件に与えたダイナミックな影響を窺い知れる。
つい最近まで(今も?)不衛生で劣悪な環境で治療が行われていたり、謎理論が人の命を奪っていたという事実には慄然とさせられる。
だが人類が得たこの力は福音のみをもたらすのではなく、細菌やウイルスを鍛えていることも忘れてはならない。人類と小さきもの絶えざる闘争はこれからも続く。
セレンディピティや名誉欲にまみれた医学者・薬学者・科学者の生涯、企業の開発競争も興味深く、読みやすい。薬が「効く」生化学なしくみもザックリわかる。
元製薬会社の研究者だけあって、
いつの時代も、世界を変えるのは正確なデータと、それに裏打ちされた意志の力だ。
研究は、今歩いている道が正しい方向に向かっているのか、ゴールは本当にあるのか、わからない時が一番苦しい。この先に向かいさえすれば、ゴールは必ずあると信じられれば、道のりはどんなに遠くとも歩き続けられるものなのだ。
などの言葉に重みがある。