監督・脚本:新海誠
【評】
ずっと、何かを探している。
ジュブナイルの古典的な手法
①少年少女入れ替わり②タイムスリップ
を使用しひと夏、いや3年、いやいや8年の奇跡を描く。
2人が同じ年齢で出逢えたのは、かたわれどきの一刹那だった。
彗星の軌跡は奇跡を導いたのだ。
序盤はキャッキャウフフで、
二人の走り方やしぐさ、髪型の違いをチェックしながら、
明るくも甘酸っぱい雰囲気で進行。
慣性が大きいというのだろうか、進行のテンポが少し遅い気もする…
と思っていたのだが、中盤から暗転。
同じ空間に辿り着こうとした滝くんに、時間の断層が、虚無が襲いかかる。
そう、新海作品でおなじみの天体イベントが今作では凶器に変貌するのだ。
口噛み酒や紐、祠といったムラ的アーティファクトが、トリガーやきっかけとなり、
世界改変への扉は開かれていく。
彼女の残したヨスガから残留思念をたどり、
物語は「秒速〜」のような哀切さのない結末へ。
新海誠的切なさキリキリ感がなく基本的に明るめであり、その点では多少もの足りなさもあったのだが、観終わったあとから、その構成や演出が面白く感じてきた。
流星と糸がシンクロする時の表現や、新海誠的音楽使用が印象的。
新海作品の上澄みが結晶した感ある。
先輩が「好きだったんだ」となったり、パパが「娘でないとヤダ!」とダダこねたりと、入れ替わりの妙が光る。なんにせよオサワリし倒すのは男のロマンだ。
確かに、瀧くんと三葉が惹かれ合うきっかけは明確でないが、まあいいんじゃないの。
あの村の霊力なのか運命なのかはわからないけども。
まあ気になっちゃったらしょうがないよ。一直線だ。
二度見ると、ジョバンニたくさんヒントが出ていることに気づく。
髪を切った理由にもようやく気づけた。
「糸守」なる地名やオバアチャンの話などのヒントも見逃せない。
過去作を彷彿とさせるアイテムとしては、
- メール、日記→ほし、秒速
- すれ違い、振り返り→秒速
- 祠、地下室→星を追う
- 天体、宇宙→ほし、秒速
- 謎の地形、建造物→雲
- 田舎、都会→秒速
などがあるかな?
『君の名は。』と『シン・ゴジラ』と『この世界の片隅に』が一気に公開された2016年は、日本映画にとって記念碑的な年になると思うし、後世「なにがあったんだ」と疑問に思われる時期になると思うんだけど、「震災から5年、やっと物語に落とし込める時期になった」という説明くらいしか思いつかない。
— たられば (@tarareba722) 2019年6月30日