評価:B+
【評】
ただの意識高い系じゃない。
苦労人が「おはなし+教訓」方式3セットで読者に訴えかける。
「可能性」と「共感」を。
いくつかの仕事を経験するうちに、どうやらこの世界の固く大きな壁は、うまい場所を突けばグニャッとへこんだり、あるときポンッと穴が空いたりするもので、一生懸命に表面をさすればザラザラと砂が剥げ落ちていくようなものだと感じるようになった。
Epi.1
(Story Phase)
僕たちは、日本を愛していた。だがそこには、可能性ではなく、確率に賭ける人たちしかいなかった。
経済産業省が、産業革新機構が支援しなかったヒト型ロボットベンチャーが、アメリカの巨人グーグルに買収されて、彼らが狙う次の産業を作るための、ドリームチームの中心になるだって? こんなドラマチックなハッピーエンドがあるだろうか。
(Analysis Phase)
せめて自分だけは、俺だけは、彼の気持ちに寄り添って、最後まで話を聞いてやろう。そう思っていた。
もしマクロの日本がだめなのだとしたら、ミクロな存在の自分が、「当事者」としてそのマクロにしっかりと影響を与えることで、ダメだといわれる日本の状況を脱することができるようにしようと、使命感に燃えていたのだ。
若い人にお薦めしたいのは、がむしゃらに目の前の仕事をすること。その中で、誰もやりたくないようなことに飛び込んでいって、自分で体験することだ。
僕たちビジネスマンは、確率に賭けているのではなく、可能性に賭けているのだ。(中略)
そこに可能性があるかぎり、思いきりダイブして、結果として生き残った自分を確認することで、雪だるま式に自信を深めていけばいい。最後には、「なんだ、たいしたことないじゃないか」「何とかなった」と笑うだろう。
Epi.2
(Story Phase)
諦めている場合じゃない。冗談じゃない。
本当に組織を動かしたいと思ったならば、「組織」という何だか得体の知れないもの「全体」に働きかけても、それは徒労に終わるだろう。そうではなくて、それが二十人の組織でも、百人の組織でも、最初の一人から丁寧に、しかも一人ずつ落としていくしかないのだ。これが組織のリアリティというものだ。
(Analysis Phase)
たとえそれが他人の話であっても、それを我が事として自らの中に取り込むことは、大きな仕事を成し遂げるときに、必ず必要になるチカラだと僕は信じている。なぜなら、それが自分のことだと思えなければ、並々ならぬ執念を持って、最後まで問題を解決しようとは思えないからだ。
どこまでもどこまでも、他人の苦労を自分の苦労として担ぎ上げること。共感し、同化するくらい、寄り添うこと。それが仕事を前に進める大きな推進力になるだろう。
現実を自分で確かめにいった回数が多いからこそ、かれらの精神は安定している。他人から見ると危険かつ大胆に思える行動であっても、本人たちはそれが大胆だとは思っていない。
意外に思われるかもしれないが、専門家に対するコネもツテもなく、誰も頼ることができない若者にとって、最後の頼みの綱は、実は本屋さんなのだ。