貧しくも暗いばかりでない生い立ち、
将棋ののめり込む中高時代、
アマ名人・加賀との死闘、プロとの闘い――。
勝負で得た金、借りた金、居候先でくすねた金を、
ギャンブルでスり、酒でスり、女でスり、
逃亡に次ぐ逃亡。
これ、絵に描いたようなあかんやつや。
これ、絵に描いたようなあかんやつや。
著者も相当アウトロー文庫な人らしい。
一口にいうと小池将棋とは逆転美の将棋である。つまり、終盤が恐ろしいくらいに強い将棋である。
小池さんは序盤は確かに出遅れます。それはマラソンと同じで二、三馬身離れて相手にくっついて走るのと同じなんです。中盤になると相手にいい手を出させない指し方をする。そして、終盤に至ると一気に相手を追い越すのです。理屈はそうなんだが、これは誰にでもできる戦法じゃない。
又、又、又、女に惚れてしまいました。浮気なつもりではないのです。いつも一生懸命でその時は死んでもいいと思っていました――
――もうすべてが終わりでした。もう二度と将棋を指すことはできないでしょう。でも、将棋ではこれまでずいぶんといい目を見させてもらった気がします。アマ名人を二回とったし、読売日本一にもなったし、グランドチャンピオン戦でも二回、優勝させていただきました。対プロとの公式戦でも断然、勝ち越しました。ただ、人間気にはまったく駄目な私でしたが、将棋だけは半端じゃなかったぞ――その思いだけを胸に私は東京からの逃亡を計ったのです。思えば私の半生は逃亡から逃亡への繰り返しでした――
とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。