評価:B
【評】
彼らの生涯の歴史の中に読み採ることは、――人生というものは、苦悩の中においてこそ最も偉大で実り多くかつ最も幸福でもある、というこのことである。
母の死、聾疾、失恋、婚約破棄、落魄――。
「お前のために残されている幸福は、らだお前の芸術の仕事の中にのみ有る。おお、神よ、私が自己に克つ力を私にお与え下さい!」
「自分は一人も友を持たない。世界中に独りぼっちだ」
からの一発大逆転、『第九交響曲』。
晩年に大噴火。マンガみてーな人生だ。
『第九交響曲』は気狂いじみた感激を巻き起こした。多数の聴衆が泣き出していた。ベートーベンは演奏会のあとで、感動のあまり気絶した。人々は彼をシンドラー家に搬んで行った。彼は着の身着のまま飲まず食わずその夜と次の午前中をうつうつと眠り通した。
不幸な貧しい病身な孤独な一人の人間、まるで脳みそそのもののような人間、世の中から歓喜を拒まれたその人間がみずから歓喜を造り出す――それを世界への贈りものとするために。彼は自分の不幸を用いて歓喜を鍛え出す。そのことを彼は次の誇らしい言葉によって表現したが、この言葉の中には彼の生涯が煮つめられており、またこれは、雄々しい彼の魂全体にとっての金言でもあった――
『悩みをつき抜けて歓喜に到れ!』
-Durch Leiden Freude-
伝記中に紹介されている曲を流しながら読むとよいかもしれない。
本編クリア後にはベンの秘蔵お手紙が見られる。