2015-08-02 真夏の死 本 B 三島由紀夫 小説・戯曲・ノンフィクション 真夏の死―自選短編集 (新潮文庫) [文庫]著者:三島由紀夫評価:B【評】身に降りかかる不幸、その反応の経時変化を追う表題作ほか10編。はやく夏がすぎればいいと朝子は思った。夏という言葉そのものが、死と糜爛の聯想を伴っていた。かがやかしい晩夏の光には糜爛の火照りがあった。悔恨は愚行であり、ああもできた、こうも出来たと思い煩うのは詮ないことであるが、それは死者に対する最後の人力の奉仕でもある。われわれは少しでも永いあいだ、死を人間的な事件、人間的な劇の範囲に引き留めておきたいと希うのである。