評価:B+
【粗評】
非平衡熱力学の泰斗が非線形・非平衡を武器に科学、哲学を横断した世界観の変遷をたどる。
なかなか難解でとっつきづらい。
決定論的、可逆的な古典科学は、初期条件と基礎方程式で記述され、時間は単なるパラメータに過ぎず、未来と過去は等価である。
しかし、今や時間は再発見され、世界は、確率論的、不可逆的なものということがわかってきた。
熱力学、相対論、量子力学の発展や、科学者、哲学者の三世紀にわたる挫折、奮闘、超克の過程を見よ。
今日、社会は潜在的に膨大な数の分岐を内包している測り知れないほど複雑な系であることがわかっている。この分岐の存在は、比較的短い人類史の中で多様な文化が進化してきたことによって実証できる。このような系はゆらぎに対して極度に敏感であることがわかっている。このことが希望と驚異の両方を生むことになる。希望と考えるのは、小さなゆらぎでさえも成長して、全体構造を変えうるからである。それゆえ、個々の活動は無意味なこととして運命づけられてはいない。他方、驚異もある。なぜなら、安定した永遠の規則による保証がわれわれの宇宙から永久になくなってしまったようだからである。われわれは、盲目的な信頼を全く許さないような危険で不確実な世界に住んでいる。しかし、正しい希望の感触だけは、このような世界からも生じてくるであろう。
非線形・非平衡・散逸構造などに興味があるキミに。
下に示した謎ウロボロスがお気に入り。
不可逆性 → 散逸構造 → 観測者↓ ↓乱雑性 ← 不安定力学系 ← 力学