評価:A
【粗評】
いかにして、なぜ、
ジャーヒリーヤ(無道)時代から天翔ける奔馬のごとくイスラーム世界が誕生したのか、
そして、イスラームはどのような宗教的性格をもっているのか。
イスラームの碩学・井筒が語る。
第一部「ムハンマド伝」…歯切れのよい文体でムハンマドの
第二部「イスラームとは何か」…神との関係や世界観など。宗教的性格を探る。
の二部構成。
特に第一部は、
著者曰く「若年の私のロマンティックな夢をじかに言葉に移したような作品」。
だから、
朝起きてから夜床に就くまでアラビア語を読み、アラビア語を教え、机に向えば古いアラビアの詩集やコーランを繙くという、今にして憶えばまるで夢のような日々を送っていたその頃の私に、ムハンマドのことを忘れる暇などありようもなかった。
文化と文明を誇る大都会の塵埃と穢悪に満ちた巷に在ることを忘れて、幻の導くままに数千里の海路の彼方、荒寥たるアラビアの沙漠に遥かな思いを馳せてみよう。
天空には延々と燃えさかる灼熱の太陽、地上には焼けただれた岩石、そして見はるかす砂また砂の広曠たる平原。
こんな不気味な、異様な世界に、預言者ムハンマドは生れたのだった。
なんてこと、臆面もなく言っちゃうの。
でも、これ読んだだけで、興味湧いてこない?
詩歌(井筒訳)や啓典の文句の引用、アラビア語の語彙など、該博な知識がコンニチハ。
コーラン全訳者の面目躍如だ。