評価:A
【粗評】
諭吉が晩年に口述筆記した痛快無比の自伝。
もち口語体。当時のにほひが感じられて実によい。文章の軽妙洒脱なところに才を感じる。
中津でくすぶっていた少年時代、適塾DQNの青年時代、世界を知った壮年時代。「ソレカラこんな話がある」と次から次へと話が出てくる。人を呼び捨てにしない、借金をしない、愚痴を言わない、怒らない。自分では否定しているが彼は間違いなく偏屈者だろう。
本書には彼の飄々とした、それでいて冷徹なキャラが滲んでいる。
344頁の人生回顧に涙。
回顧すれば六十何年、人生既往を想えば洸として夢のごとしとは毎度聞くところであるが、私の夢は至極変化の多い賑やかな夢でした。旧小藩の小士族、窮屈な小さい箱の中に詰め込まれて、藩政の楊枝をもって重箱の隅をほじくるその楊枝の先にかかった少年が、ヒョイト外に飛び出して故郷を見捨てるのみか、生来教育された漢学流の教えをうっちゃって西洋学の門に入り、以前に変った書を読み、以前に変った人に交わり、自由自在に運動して、二度も三度も外国に往来すれば考えはだんだん広くなって、旧藩はさておき日本が狭く見えるようになって来たのは、なんと賑やかな事で大きな変化ではあるまいか。
【良かった場面/箇所】
・口語体、読みやすい、面白い
・偏屈エピソード
・しっかり朝鮮をdisる
【問題点・疑問点】
・カタカナにする基準が謎
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【その他】