旅順攻防戦の真実―乃木司令部は無能ではなかった (PHP文庫) [文庫]
著者：別宮暖朗
評価：C
豊富な資料から、近代の戦争の例を引用しながら、また当時の戦術や防御思想などを解説しながら、十分の説得力を持たせた上で、”乃木希典は決して明敏でもなければ、果断でもなく、まして猛将でもない。だがそうだとして、勇猛果敢な将軍は乃木よりも良い結果を出せただろうか？もっと早く、そして損害も少なく、旅順要塞を陥落させることができただろうか？”とノギーを弁護する。
至るところで司馬遼太郎の言葉を引用し、「いやそれはちがうでしょ」とチョップを食らわせている。司馬史観の影響力が窺い知れる。
"消耗戦ではどの地点を主攻とするかが問題ではなく、どの地点で効率よく敵兵を殺傷できるかが問題なのだ。"
"休戦の成立を知った両軍の兵士は歓呼の声をあげ、保塁から、また塹壕を出て抱きあった。その夜多くの日本兵がロシア兵に招かれ、旅順市街地まで酒盛りに出かけた。当時の戦争ではこの事態は決して珍しくない。"
などの「フーン」知識も満載。
旅順以外の戦地についても知りたいところですな。
