Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

刺青・秘密

刺青・秘密 (新潮文庫)
刺青・秘密 (新潮文庫)
著者:谷崎潤一郎
評価:B

谷崎の短編集。やはり彼の作品の中で『細雪』を始めに読んだのはまちがいだったと思わされる。つまんないもん。
永井荷風が言うには、谷崎の芸術には顕著な特質が三つあるらしい。それは、

一、肉体的恐怖から生ずる神秘幽玄、肉体上の惨忍から反動的に味わい得らるる痛切なる快感
二、全く都会的であること、その作品の主材の取扱い方は勿論、説話の順序、形式の整頓、些細なる一字一句の選択に至るまで、尽くその特徴が表れて溢れていること
三、文章の完全なこと

なんだって。

●刺青

彼のいわゆる処○作というやつらしい。僅かに10頁。
冒頭の入りがすばらしいと思う。

”それはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。殿様や若旦那の長閑な顔が曇らぬように、御殿女中や花魁の笑いの種が尽きぬようにと、饒舌を売るお茶坊主だの幇間だのという職業が立派に存在して行けた程、世間がのんびりしていた時分であった。女定九郎、女自雷也、女鳴神、―――当時の芝居でも草双紙でも、すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しからんと努めた揚句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄になった。芳烈な、或は絢爛な、線と色とがその頃の人々の肌に躍った。”

正直これだけでおなかいっぱい。

”鋭い彼の眼には、人間の足はその顔と同じように複雑な表情を持って映った。その女の足は、彼に取っては貴き肉の宝玉であった。拇指から起って小指に終る繊細な五本の指の整い方、江の島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような踵のまる味、清冽な岩間の水が絶えず足下を洗うかと疑われる皮膚の潤沢。この足こそは、やがて男の生血に肥え太り、男のむくろを蹈みつける足であった。”

変態だ・・・。脚フェチだ・・・。

●少年

少年たちがなんだかぬめぬめした遊びに興じちゃうお話。変態。

”「人間の足は塩辛い酸っぱい味がするものだ。綺麗な人は、足の指の爪の恰好まで綺麗に出て来て居る」
こんな事を考えながら私は一生懸命五本の指の股をしゃぶった。”

男の足なんか舐めたくないお・・・。
手ひどい仕打ちを受けた紅一点・光子は終盤になって他の三人に対し反撃を敢行する。

”「お前は先仙吉と一緒にあたしを縁台の代りにしたから、今度はお前が燭台の代りにおなり」
忽ち光子は私を後ろ手に縛り上げて仙吉の傍へ胡坐を搔かせ、両足の踝を厳重に括って、
「蠟燭を落さないように仰向いておいでよ」
と、額の真中にあかりをともした。私は声も立てられず、一生懸命燈火を支えて切ない涙をぽろぽろこぼして居るうちに、涙よりも熱い蠟の流れが眉間を伝ってだらだら垂れて来て眼も口も塞がれて了ったが、薄い眼瞼の皮膚を透して、ぼんやりと燈火ののまたたくのが見え、眼球の周囲がぼうッと紅く霞んで、光子の盛んな香水の匂いが雨のように顔へ降った。”

数え10歳の子どもにロウソクプレイだと・・・?新しすぎる・・・!
光子の攻勢は已むところを知らず、

”次第に光子は増長して三人を奴隷の如く追い使い、湯上りの爪を切らせたり、鼻の穴の掃除を命じたり、Urineを飲ませたり、始終私たちを側に侍らせて、長くこの国の女王となった。”

”Urine"って何?と思い、註解を見ると、

           Urine 英語。尿。

゜  ゜       (  Д )

やっぱり谷崎は只者じゃあない。

幇間

根っからの道化のお話。
もしかしたら主人公に自分を重ねてしまう人があるかもしれない。

●秘密

女装してたら昔逢った女と再会しちゃうお話。

●異端者の悲しみ

谷崎唯一の自伝的小説らしい。

”自分は蠢々として虫けらの如く生きて行く貧民の間に伍して、何等の自覚もなくその日その日を過して居られる人間とは訳が違う。自分には偉大なる天才があり、非凡なる素質がある。たまたまその天才と素質とが、成功致富の道に拙くて、芸術的の方面にのみ秀いでて居る為めに、いつまでもこうやって逆境を抜け出る事が出来ないのである。”

NEETの言い訳じゃん!
そんなニートの章三郎が、友人の鈴木、そして妹の死によって覚醒する。

”それから二た月程過ぎて、章三郎は或る短編の創作を文壇に発表した。彼の書く物は、当時世間に流行して居る自然主義の小説とは、全く傾向を異にして居た。それは彼の頭に発酵する怪しい悪夢を材料にした、甘美にして芳烈なる芸術であった。”

●二人の稚児

弟分の瑠璃光丸はよく我慢したね。平安仏教ファンタジィ。

●母を恋うる記

月光・闇・砂・海の四重奏。夢オチのファンタジィ。