サム・ジーヴァ帝国図書館(Javaさんのお部屋)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

海と毒薬

海と毒薬 (新潮文庫)
海と毒薬 (新潮文庫)
著者:遠藤周作
評価:A*

自分の遠藤周作3作目。彼の作品の新たな魅力に気づかされた。全部で200ページ足らずということもあり、尾道-大阪間で読み切ってしまった。

著者が基督(こう書くだけで手軽イケメン)教徒ということも手伝ってか、日本人という種族に対する深い洞察を、小説という媒体で垣間見ることができたように感じた。裏面のあらすじの言葉を借りれば、無宗教であるがゆえの「精神的倫理的な真空」を日本人は有しているという。

登場人物・戸田の
(変ったことはないんや。どや、俺の心はこんなに平気やし、ながい間、求めてきたあの良心の痛みも罪の苛責も一向に起ってこやへん。一つの命を奪ったという恐怖さえ感じられん。なぜや。なぜおれの心はこんなに無感動なんや)(俺には良心がないのだろうか。俺だけでなくほかの連中もみな、このように自分の犯した行為に無感動なのだろうか)という思い、
そして勝呂の「でも俺たちいつか罰をうけるやろ」に対する「罰って世間の罰か。世間の罰だけじゃ、何も変らんぜ」という返答。

本編ののち、「日本人の中には、良心の「罰」ではなく、世間や社会の「罰」をしか知らぬ「不気味な心」がひそんでいるのではなかろうか?」と解説者・佐伯彰一は読者に問いかける。