痴人の愛 (新潮文庫)
著者:谷崎潤一郎
評価:A*
『春琴抄』―Inspire the next―というわけで手に取った『痴人の愛』。世の男性にはぜひ一読してもらいたいと思った。
大正期に書かれたとはいえ、現代にも俄然通用する文学作品。谷崎さんマジ変態。
特によく覚えているのが↓のシーン。
ナオミはいつでもその「手」を用いられるように、勝負の時は大概ゆるやかなガウンのようなものを、わざとぐずぐずにだらしなく纏っていました。
そして形勢が悪くなると淫りがわしく居ずまいを崩して、襟をはだけたり、足を突き出したり、それでも駄目だと私の膝に靠れかかって頬ッぺたを撫でたり、口の端を摘まんでぶるぶると振るったり、ありとあらゆる誘惑を試みました。
私は実にこの「手」にかかっては弱りました。就中最後の手段―――これはちょっと書く訳には行きませんが、―――をとられると、頭の中がなんだかもやもやと曇って来て、急に眼の前が暗くなって、勝負の事なぞ何が何やらわからなくなってしまうのです。
「ずるいよ、ナオミちゃん、そんなことをしちゃ、………」
「ずるかないわよ、これだって一つの手だわよ」
他にもナオミちゃんの悪行は目白押しである。
男が読むと「俺ガイル」てな気持ちになること請け合い。
譲治さんはナオミと出会わなかった方が幸せだったのだろうか?