重金属のはなし

重金属のはなし - 鉄、水銀、レアメタル (中公新書) [新書]
著者：渡邉　泉
評価：C

第一章で重金属の特徴、人類による重金属の利用を、
第二章で生物における重金属の必須性と毒性について解説し、まず地ならし。
第三章から第六章までの各章を毒の代表選手たち、水銀、カドミウム、鉛、ヒ素の解説に費やし、
第七章、第八章では重金属のもたらした公害の歴史とその対策について記して終了。

水銀、カドミウム、鉛、ヒ素ら毒物と人間の関わりの歴史は興味深い。古人も多く毒に死せるあり。
水俣病・イタイイタイ病など、公害の歴史には目を覆うばかりであった。土呂久公害も歴史から忘れ去られようとしている。こういった公害・環境汚染が今なお途上国で進行していることに、人間の業の深さを感じる。
もっとも、先進国も完全に公害を過去のものとしたわけではない。

「我が国は決して環境対策における先進国でも模範国でもない」「問題点を2つにまとめれば、第一として、汚染を起こしうる重金属群（レアメタルなど）を網羅できていない点、第二として、有害性が明らかとなっている重金属への対策が不十分な点」

人間が進歩する限り、重金属やその他化学物質のもつ毒性との闘いは終わらないだろう。