Javaさんのお部屋(サム・ジーヴァ帝国図書館)

Javaさんのお部屋です。引っ越しました。詳しくは「はじめに」を読んでね。スマホ版は全体像が見えにくいから、PC版と切り替えながら見てね。

砂時計の七不思議

砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書) [新書]
著者:田口善弘
評価:B

粉粒体(粉体)が見せる諸現象について物理学者たる著者が紹介する。
タイトルは砂時計の上半分「ホッパー」の七不思議から。
本書に興味を持った理由が、自分の研究に関わりがあったからだということは否定できない。

著者がたびたび嘆く「粉粒体は中が見えない」という観測上の問題点には大いに同意した。
第二章~第四章では、数値計算のモデルを示したり、具体的に計算を行っていたりと、なかなか興味深かった。

仕方のないことではあるが、本書の記述は、粉粒体が起こす諸現象の紹介にとどまっており、その原理や法則・方程式についてはほとんど触れられていない。
結局わかったのは、「粉粒体はよくわからない」ということだ。

第六章では、粉粒体の枠を飛び越えて物理学の来し方行く末の話に移行する。
正直に言ってあまり理解できなかった。が、因果関係もわからずに、「自然界にあるものをそのまま計算機の中で再現して、それで理解したと言えるのだろうか?」「非常に精密な観測とどこが違うのだろうか?」という著者の問いかけには大いに悩ませられる。
本書の発行は95年だが、この20年、粉粒体に関する知見にはあまり進歩がみられないようだ。

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